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バーチャル美少女ねむ氏「メタバースでより創造的に」

彼女にとって「クリエーティブな自分が取り出せる世界」だというメタバースは、創造活動を営む人類の新天地だ。

ねむ氏は、17年に配信活動を開始した「世界最古の個人系VTuber」。アバターを使うことで「自分のなりたい姿で生きられるという時代が、これから来るのではないか」(ねむ氏)と思い、実験的に始めてみたのが「バーチャル美少女ねむ」誕生のきっかけだという。

技術的に発展途上にあり、一般層への普及はまだこれからというメタバース。しかしクリエーターにとってメタバースは、現実世界以上に自由にものづくりを楽しめる場所なのだという。その理由の1つは、アバターにある。

ねむ氏は著書「メタバース進化論」や動画配信を通して、メタバースの面白さや革新性を発信している

メタバースは、現実の姿にとらわれず自分のありたい姿で活動することができる場所だ。「私は本を出版したり、CDを出したりライブをやったり、ありとあらゆることをやっているけれど、これは全部美少女キャラクターじゃないと難しい」と笑うねむ氏。容姿の概念を取っ払って「自分の魂からクリエーティブな部分を取り出してその姿で活動できるのは革新的なこと」だという。年齢や性別によって、現実世界で「アイドル」として活動するのが難しい人だって、仮想空間では人気アイドルになれる。アバターを使うことによってより開放的にクリエーションに取り組めるのは仮想空間ならではだ。

また、空間に物理的な制約がないこともメタバースならではの特徴だ。何もない空間から瞬時にペンを取り出し、絵を描くこともできる。千人以上の観客を1人で集めて、音楽ライブをすることだって簡単に可能だ。「いくらでも、世界だってつくれてしまう」とねむ氏が語るように、メタバースは現実世界にある物質的なバリアを突破し、よりクリエーションがしやすい土壌を備える。

「メタバースによって、人間がよりクリエーティブになっていく、というのはまちがいない」と話すねむ氏。自分の作りたいものを思うがままに作ることができるメタバースは、人間の創造活動における新たな突破口になるかもしれない。

(星野貴恵)