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仮想通貨は短期では望み薄 長期で狙える銘柄は? 23年のオルタナティブ投資展望(3)

2021年に1ビットコイン(BTC)=約7万ドルまで大幅上昇した暗号資産(仮想通貨)市場が、22年は一貫して大幅下落に見舞われた。では23年はどうなるのか、展望をアナリストに聞いた。

22年の仮想通貨の下落は、米国を中心とした金融引き締めの影響に加えて、11月に起きた取引所大手、米FTXトレーディングの破綻など、関連企業の相次ぐ不祥事や破綻が追い打ちをかけた。

23年に反転上昇は見込めるのか。マネックス証券の暗号資産アナリスト、松嶋真倫さんは「23年のうちに上昇相場が来ることは期待しにくい。しかし、長期視点での買い時の年とは言える」という。

なぜ、23年中には上昇しにくいのか。松嶋さんは「18年に起きた取引所の大規模ハッキングを受け、日本で顧客資産の保全などの規制が進んだのと同様に、今回のFTX問題で今後は米国で規制強化の議論が本格的に進むはず。1年程度はネガティブな話題が続く可能性が高い」と説明する。

一方で、ビットコイン価格を見れば、底値が近いとも言えるという。「過去の暴落時は、高値から80~85%安で止まるのが通例だった。となると、1万~1万4000ドルまで下がれば安心感はある。ただ、底値で買えても、前回のような大幅上昇が期待できるかは不透明だ」

イーサとBTCの性格の違い

暗号資産は多種多様だが、主要通貨と言えるのがビットコインとイーサリアム(イーサ)の2つ。この2つは、暗号資産としての性格にかなり違いがあるという。

「ビットコインは、ハッキングなどの不祥事が近年は全くないなどセキュリティー面が堅牢で、暗号資産の中では比較的低リスク。相場の下落中は下げ幅が最も小さい。半面、上昇時の上げ幅は最も小さい可能性がある」

一方のイーサは、単なる通貨というより、その上でブロックチェーンの関連サービスを開発できるインフラと言うべき存在だ。サービスが盛り上がるほど、通貨としてのイーサも値上がりが期待できるという。

さらに、技術的にはビットコインの先を行く部分がある。「22年のアップデートで、取引に膨大な電力を消費しない仕組みに切り替わった。今後も取引速度を上げ、インフラとしての使い勝手を向上させる取り組みが進んでいきそうだ」

ビットコインが、法定通貨と違う形で資産を保存するための「デジタルゴールド」だとすれば、イーサはフィンテックや次世代インターネットといわれるWeb3の業界が発展すれば値上がりする、一種の「株式」のような性格の資産と言えそうだ。「リスクが高いので、底値近辺を狙い時間分散で買うべきだが、この分野の将来性に期待するなら、期待できる上昇率はイーサの方が大きいだろう」

(臼田正彦)