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住宅ローン、変動型なら貯蓄を 金利上昇に備え 家を買う(下)住宅ローン

筧家のダイニングでは恵がビールを飲みながら、不動産検索サイトで住宅の価格を熱心に調べています。「都内の物件は中古でも高すぎるよ。貯金もあまりないから、買うなら住宅ローンをたくさん借りるしかないよ」とぼやきました。良男は心配そうな様子です。

筧(かけい)家の家族構成
筧幸子(48)ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。
筧良男(52)機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。
筧恵(25)娘。旅行会社に勤める社会人3年目。
筧満(15)息子。投資を勉強しながらジュニアNISAで運用中。

幸子 住宅ローンの借りすぎは禁物よ。多く借りて住宅ローン控除の恩恵をフルに受ける手もあるけれど、金融機関が「貸せる」額と「返し続けられる」額は違うことには注意してね。極端に言えば金融機関が貸せる額の上限は、生活費を住宅ローンに優先して配分する額よ。余裕資金があるなら、頭金を多めにすることを勧めるわ。利息負担が減るから。頭金は住宅価格の1~2割が理想とも言われているわね。

良男 頭金以外にも用意するお金があるんだったな。

幸子 そう。住宅の代金以外も考えなきゃね。不動産会社に支払う仲介手数料、住宅ローンを組むなら融資事務手数料、所有権の移転登記のための登録免許税といった税金などね。引っ越し代もかかるから、住宅取得に伴う費用として住宅価格の1割はみておきたいね。

 そんなに……。家は当分買えそうにないよ。

良男 俺の知り合いは毎月の返済可能額から逆算して買ったと言っていたな。

幸子 毎月の返済額は手取り収入の25%程度までに抑えたいね。ただし、マンションだと修繕積立金や管理費もかかる。手取り収入からそうした費用を差し引いた残りの金額で生活できるかがカギね。ライフルホームズ総研のチーフアナリスト、中山登志朗さんは「ボーナスなどの収入に頼らず、毎月の所得だけで返済可能なプランが望ましい」と話していた。

 色々欲しいモノあるから、毎月返済するのは絶対無理。頑張って稼ぐしかないか。

幸子 共働きなら夫婦で返済する人も多いよ。ただ、家計の収支の変化は要注意。ファイナンシャルプランナー(FP)の有田美津子さんは「子どもができれば、育休や時短勤務で収入が減ったり、教育費で支出が増えたりすることが多い。ライフプランを考慮して借入額を決めたい」と指摘していた。

良男 返済期間は短い方がいいのかな。

幸子 利息の支払いが減るからね。ただし、毎月の返済は多くなるよ。最初は長めに借りて、お金に余裕ができたら繰り上げ返済するのも手よ。

良男 金利のタイプでローンの返済額は変わるけれど、ずばり変動と固定どっちがいい?

幸子 一長一短があるので「絶対こっち」とは言えない。金利のタイプは3つあって、借入期間中の金利が変わらないのが「全期間固定型」よ。総返済額が決まって管理しやすい。ただし金利水準は高めね。「変動金利型」は半年ごとなどに金利を見直すの。今の金利水準は固定よりかなり低いけれど、将来は金利が上がって返済額が増える可能性がある。「固定金利選択型」は5年、10年といった期間は固定金利とし、その後は変動金利か固定金利かを選ぶの。

良男 住宅ローンの固定金利が上がったと新聞で読んだぞ。

幸子 日銀は2022年12月に大規模緩和を修正したの。固定型の金利は長期金利に連動する。23年1月にメガバンクの10年固定型や住宅金融支援機構の「フラット35」などの住宅ローン金利は軒並み上がった。すでに固定型で借りた人は関係ないけれど、これから借りる人はこれまでより高い金利になる。

 変動金利も上がるの?

幸子 すぐには上がらない。日銀はマイナス金利政策を変えておらず、変動金利に連動する「短期プライムレート」は低いままだから。今は物価上昇に賃上げが追いついていないでしょ。だから政策金利が今後数年で大幅に上昇する可能性は低いとみている人が多いよ。ただし、予想はあてにならないからね。

 もし変動金利が上昇すると、返済額はどう変わるの?

幸子 例えば毎月の返済額が一定の元利均等返済、返済期間が35年で当初の適用金利が0.4%、6年目で金利が上がると仮定するわね。借入額が4000万円の場合、当初の毎月の返済額は約10万2076円よ。仮に金利が1%上がると、返済額は約1万6000円増える。

良男 それは大変だな。

幸子 変動金利の場合、金利が上昇しても返済を続けられるようにしたいね。ニッセイ基礎研究所の金融調査室長、福本勇樹さんは「変動型で借りる人は、固定型で借りた場合との毎月の返済額を比較し、その差額分は貯蓄したい」と助言していた。金利上昇があれば返済額の増加分を貯蓄で補う戦略ね。

良男 今なら固定金利がいいのかな?

幸子 金利上昇リスクがなくなるから、検討する価値はある。FPの有田さんは「収入が不安定な人や、貯蓄が苦手で家計に余裕がない人は固定型で借りるのも一案」と話していたよ。

 いつか家を買いたいな。

幸子 住宅は人生で一番大きな買い物と言われるよね。まずは普段の収支を見直して住宅資金をためてみては。後はあんまり言わないでおこうと思ったけれど、親に住宅資金を贈与してもらうというのもありかも。

 ありがとう。その手があった。優しい両親に乾杯!

良男 ……。

幸子 パパのお小遣いを減らして、恵のためにためるね。

団信、保証内容が充実
MFS取締役 塩沢崇さん

住宅ローンの返済が60歳以降まで続く場合、住宅ローンの繰り上げ返済を考える人が多いです。退職すると、大抵の人は収入が大きく減り返済を続けられなくなるリスクが高まるためです。ただし、無理に退職金などで繰り上げ返済すると、老後資金が大きく減り生活が苦しくなる可能性があります。単純に繰り上げを急ぐことが家計にプラスになるとは限りません。
借入時に加入する団体信用生命保険にはがんや脳血管疾患などを幅広く保障するタイプもあり、内容が充実してきています。契約者の死亡時などは保険金で残りの住宅ローンが弁済されます。繰り上げ返済をせず預貯金を手元に残せば、一部を運用することもできます。毎月の返済額と老後資金や年金額の兼ね合いを踏まえつつ、柔軟に返済プランを練りましょう。

(聞き手は勝莉菜乃)