新型コロナウイルス下の巣ごもり需要で世界的に大きく成長したゲーム業界。長期的にはさらなる拡大が見込まれており、仮想空間「メタバース」など新技術の活用にも期待が高まる。23年のゲーム業界はどんな1年になるか、担当記者が占った。
デスク「ゲーム業界で注目のテーマは何かな」
A記者「やはり23年もメタバース関連の話題は多いだろう。バンダイナムコホールディングスは22年4月からの中期経営計画でIP(知的財産)に関連するメタバース開発などに150億円を投資すると発表している。グループ内でメタバースやWeb3技術に関する企業に投資するファンドも立ち上げ、3年間で30億円を投資する計画だ。23年にはさっそく人気の『機動戦士ガンダム』をテーマにしたメタバースに『ガンプラコロニー』と呼ぶ空間を立ち上げる予定だよ」
B記者「企業の投資はますます加速していきそうだ。米マイクロソフトはゲームソフト大手の米アクティビジョン・ブリザードを687億ドルで買収すると発表したが、これもメタバースの土台を築くための動きだと見られている。ゲーム会社やテック企業をめぐる投資合戦になっていくかもしれないね」
C記者「ソフト面だけで無く、メタバースの普及に影響するハードの整備も進みそうだ。ソニーグループは23年2月に仮想現実(VR)ゴーグルの次世代機種『プレイステーション(PS)VR2』を発売する予定だよ」
- 【関連記事】イチから分かる!メタバースって何?

デスク「ゲーム業界の勢力図はどうなっていくのだろうか」
A記者「近年は中国勢の台頭がめざましい。上海に本拠地を置くゲーム会社miHoYoが手がける『原神』は、配信開始後の2年間で37億ドルの売り上げがあったと推定するデータがある。ネット大手の騰訊控股(テンセント)もゲーム事業に力を入れていて、日本の漫画を原作としたゲーム開発などを手がけている」
C記者「特にスマホゲームでは新たなヒットを生み出せなければ中国勢に水をあけられるかもしれない。あるゲーム業界関係者は『中国企業は1作品に100億円の開発費をつぎ込むが、日本企業は20億円以上の開発投資を渋る』と指摘していたよ」
B記者「動画投稿アプリ『TikTok(ティックトック)』を運営するバイトダンスもゲーム事業に力を入れていて、ゲーム会社のM&A(合併・買収)を繰り返しているよ。これまでとは異なる企業が存在感を強めていく可能性があるね」
A記者「国内のスマホゲーム大手は『ガチャ』とよばれる課金システムに収益を依存している現状がある。個人的には『NFT(非代替性トークン)』や『メタバース』などの最新技術を活用し、新しい遊び方のゲームを開発してほしい」
デスク「IPを活用した動きも気になるところだね」
B記者「ディー・エヌ・エーとバンダイナムコ系が手がける『タクトオーパス』の新作ゲームが23年春に配信される予定だ。既にアニメや漫画が発表されている。複数の媒体でコンテンツを広める『メディアミックス』の動きは一般的になってきたね」
A記者「人気ゲームが原作のドラマも話題になりそうだ。23年1月にはソニー・インタラクティブエンタテインメントのホラーアクションゲーム『The Last of Us』を原作とするドラマが配信される。同社が開発する人気レースゲームシリーズ『グランツーリスモ』の映画化も発表された。現在はダウンロード販売も普及し、店頭の売り場には置いていない原作ゲームを気軽に購入して遊べる状況になっている。ドラマの放映によって原作ゲームの販売が盛り上がることも期待できそうだ」
C記者「日本の漫画やアニメは世界的に人気が高く、ゲームに取り込んでいく動きも加速しそう。22年11月にサウジアラビアeスポーツ連盟と日本オンラインゲーム協会がゲーム産業の発展に向けて覚書を結んだ。『鬼滅の刃』など日本のIPはサウジアラビアでも有名で、ゲーム分野での協力関係に生かしたいと話していたよ」

デスク「国内のゲーム企業の活躍に期待したいね」
A記者「フロム・ソフトウェアが22年2月に発売したアクションRPG『エルデンリング』は、9月末までに全世界で累計出荷本数が1750万本を超えるなど高い評価を受けている。実際にプレーしたところ、難易度の高いボス戦に何度も挑んでクリアしたときの達成感はひとしおだった」
B記者「今年はスクウェア・エニックスの『ファイナルファンタジー』や任天堂の『ゼルダの伝説』といった、世界的に人気の高いシリーズの最新作が発売される予定だ。国内ゲームメーカーには今年も国際的な競争力を発揮してほしいね」
コメントをお書きください