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野村不動産HDの沓掛社長「マンションに教育機能充実」

22年1月竣工の『プラウドタワー亀戸クロス』(東京・江東)は大型商業施設が隣接し、子連れの家族が利用する広場を設置した。こうした多機能な街づくりが評価されている」

「最近は供給戸数が減っているという意見もあるが、需給バランスが適切になってきたという印象だ。以前は売れるから数多く建てるという傾向もみられた。資材高やインフレの中でデベロッパーの間でも顧客の需要に応じて販売戦略を立てる発想が広がっている」

――マンションにどんな機能を付けていきますか。

「学校や幼稚園、塾など教育面を充実させる。22年12月には学習塾大手のやる気スイッチグループホールディングスに27億円出資した。グループ会社のスポーツジムなどとの連携を検討している。シニア向けの賃貸住宅も展開しており、高齢者の学びもケアしたい」

「住人同士のコミュニティー運営も支援する。例えばマンションの建て替えは都心部を中心に大型案件の実績があり、強みだ。今後は中古住宅の老朽化が進み、長期的な修繕計画を策定する必要性が高まる。国土交通省や業界内で制度改善に向けた議論を進めている」

大型商業施設が隣接する「プラウドタワー亀戸クロス」(東京都江東区)

――マンション価格の上昇は続くでしょうか。

「上昇率は鈍化するとしても引き続き、高値圏で推移するだろう。販売物件が都心に集中する傾向も続き、世帯年収が1500万円を超えるパワーカップルの需要は底堅い。金融資産の蓄積で富裕層の世帯数は十数年前より増えている。駅前再開発と合わせて、より取得する土地の選択肢を絞りながら計画を組む」

「業界全体では建築費の高騰に加え、人手不足などによる工期の遅れが発生していると聞く。当社の特徴の完成前に売り切る販売スタイルも市場の変化に応じて、完成後に実物を見せるなど顧客と時間をかけて対話するやり方に変わるだろう」

――今期から新設した海外部門が好調です。

「タイなど東南アジアを中心に展開する海外の分譲住宅事業は各都市で5~6年かけて花が咲く段階まで来た。街づくり全体のプラン決めから建設棟の配置など、開発の上流段階から現地不動産会社と連携する案件が増えてきた。スマートシティといった街づくりのデジタル化などの知見を提供し、存在感を発揮したい。最終的に単体で事業展開できるようにする」

海外では東南アジアを中心に住宅分譲事業を手掛ける(ベトナムで進める大規模開発のイメージ図)

――4月で新井聡副社長にトップを譲ります。

「国内市場から世界を志向するなかで世代交代を図った。当社は事業領域も多岐にわたる。新社長にはグループのシナジーを高めてもらいたい。私は会長として取締役会の議長を務め、ガバナンスの観点から会社の持続的な成長を支えていく」

海外での成長どう描く

2022年は主力のマンションブランド「プラウド」が好調で、住宅分譲事業の利益率は23%前後と高水準を維持した。ただ、開発適地の減少に加え、22年末には日銀が長期金利の変動幅拡大に動き、住宅市場は不透明感も漂う。勢いを維持できるか注目が集まる。
海外事業も軌道に乗り始めた。もっとも、新興国は経済成長が著しい一方、世界的な脱炭素の流れを背景に今後は環境対応を意識した街づくりにも取り組む必要がある。競合のデベロッパー各社がアジアへの参入を加速する中、同社ならではの持ち味をどう発揮するか。新体制での手腕が問われる1年になる。
(山口和輝)