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異形の金融オリックス「各業界で収益性トップに」 井上社長 金融直言

祖業のリースから異業種参入やM&A(合併・買収)を重ね、他に類を見ない金融グループを構築してきたオリックス。2022年には通販化粧品大手のディーエイチシー(DHC、東京・港)を約3000億円で買収すると決めるなど一段と勢いづく。もっとも、これまでの急成長を支えてきた低金利環境は転機を迎えつつある。そもそも「オリックスは何の会社か?」と疑問を持たれることも少なくない。オリックスはどこに向かうのか。井上亮社長兼グループ最高経営責任者(CEO)に経営戦略を聞いた。

(聞き手は和田大蔵)

――22年11月にDHCの買収を発表しました。狙いは何でしょうか。

「注力分野であるプライベートエクイティ(PE=未公開株)投資事業の一環だ。数年前にもヘルスケア関連のオーナー企業の買収を検討したことがあり、DHCのオーナーとは1年以上にわたり協議した。オリックスの営業網を活用して国内外で販路を拡大し、経営管理を高度化して企業価値を高める。将来は新規株式公開(IPO)や他社への売却で投資資金を回収するのも選択肢と考えている」

――東芝への出資検討を公表していますが、こちらもPE投資の一環ですか。

「東芝も純投資だ。企業価値を高めた後に売却することになる。検討中の案件なので詳細は控える」

――22年3月に売却した会計ソフト子会社の弥生(東京・千代田)は14年の買収当時、戦略的買収と説明していました。オリックスにとって純投資とそれ以外との違いはどこにありますか。

「そもそも、当社グループには(売却対象の)例外がない。成長できる事業は継続保有して成長させるが、ピークを迎え、そのまま持っていては株主に説明できないと判断したら売る。経営者の私自身も例外ではない。バリューを出せる間は働くが、これ以上のバリューを出すのが難しいとなったら辞めることになる。極端な言い方だが、基本そういう考えだ」

DHCの買収額は事業承継目的のM&Aで過去最大級

――22年からパーパスの策定に取り組んでいます。

「早ければ23年春に発表する。パーパスをきっかけに、社員にオリックスグループで働いているという意識を改めて持ってもらいたい。話し合いは国内外のグループ各社の40歳代以下の社員らに任せている。次を担う世代にとって大事な取り組みだからだ」

――オリックスは金融のほか不動産、再生可能エネルギー、空港と事業範囲が広いため、一言で言い表すのは難しそうですね。

「難しいからこそやっている。最近は若手社員の転職が増えている。当社グループで働くことへの満足度が低くなっているようだ。待遇の改善で対応できる部分はあるが、オリックスがどんな会社であり、なぜここで働くのか、社員が分からなくなっている側面もある。パーパスの策定作業を通じ、社員全体の意見を集約したい」

「私の入社当時は小所帯で、とにかくいろんな案件を取ろうと必死だった。様々な事業に取り組むようになると、グループ会社同士の連帯感が薄れてしまった。そこで当時の宮内義彦社長(現シニア・チェアマン)が取り組んだのが1988年の球団買収と、89年の旧オリエント・リースからの社名変更だったと思う。ただ今や当社の営業資産の半分は海外にある。日本の球団だけでは限界がある」

――井上社長自身はオリックスをどう定義しているのでしょうか。

「オリックスは中小企業の集合体だ。私個人としてはこれで良いと考えている。結果論だがバランスが取れており、一部の事業で業績が悪化しても他で補えるようになった。新型コロナウイルス下ではホテルや空港の業績悪化を銀行や保険がカバーした」

「各事業の経営指標で重視するのは収益性で、それぞれの業界や市場の収益性トップでありたいと思っている。半面、売り上げ規模やシェアでトップという目標は一切持っていない」

井上亮 オリックス社長

――ここまで事業範囲が広がると、目配りするにも限界があるのでは。

「難しいと思う。将来は大手商社のようにカンパニー制に移行し、それぞれの事業部門が強い権限を持つ形になるだろう。権限委譲を段階的に進めており、22年には投融資に関して、各本部長の権限で決済できる金額の上限を緩和した。23年1月には管理本部を大きく3部門に分け、私と昇格した専務2人が1部門ずつ担当する形に変えた。今後の投融資拡大を見据え、管理機能を強化する狙いがある」

「私は非常にラッキーな男で、若手のころから海外を中心に様々な企業や業界を見ることができた。これは創業間もない時期に入社したからこそできた経験だ。今のオリックスにそうした人材はおらず、それは仕方がないことだ。だったら私の代わりになる人材を探すのではなく、組織体制を変えた方がいい」

井上氏は「カリスマ経営者」として知られた宮内氏(右)からCEOを引き継いだ(14年5月、東京都千代田区)

――日銀が大規模緩和策を修正しました。低金利下で急成長してきたオリックスにとって、金利上昇は経営にマイナスではありませんか。

「むしろプラスだ。リースや融資といった金利ビジネスがようやく復活する。低金利下でも全国の法人営業網を維持してきたのは将来金利が上がると信じていたからだ。今後は経営資源を金利ビジネスに振り向ける」

――企業買収などの投資事業は借り入れコストが上がり、収益が悪化します。

「もともと収益性の低い案件はやっておらず、この程度の金利上昇では既存投資先にはほぼ影響がない。新規投資もコスト上昇をふまえて採算を判断する。経験上、金利上昇局面では企業の資産売却が増えるので、当社にとっては買いのチャンスとなる」

――22年には円安が進みましたが、経営にどのような影響が出ていますか。

「海外資産で売るべきものは売っている。22年11月には米地熱発電大手オーマット・テクノロジーズの株式の一部を売却し、約150億円の利益を得た。地熱発電の技術を日本に持ち込むべく17年に出資したが、採算の面で難しいと判断した。売却当時の為替は1ドル=140円台で、円換算で高いリターンになった。反対に新規投資には慎重になっている」

――今後、魅力的な事業は何でしょうか。

「その場になってみないと分からないというのが本音だ。22年にベンチャーキャピタル(VC)事業を約9年ぶりに再開したが、これからどんどんやっていくというより、タイミングが良いときに良い形で投資できるように体制を整えた。各案件の良しあしは現場の営業担当者が一番よく分かっている。営業担当の判断を尊重しつつ、問題が起こりそうならば管理部門が自発的に注意を促すような体制をつくりたい」

いのうえ・まこと 75年(昭50年)中大法卒、オリエント・リース(現オリックス)入社。香港、ギリシャ、米国に駐在するなど国際部門が長い。11年社長。14年にCEO兼務で現職。東京都出身。70歳