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コロナ禍の特例貸付、3割が返済不能 2108億円免除決定

新型コロナウイルス禍で収入が減った世帯に特例で生活資金を貸し付ける国の制度を巡り、返済免除を求める申請が2022年10月末時点で貸付総数の3割超(約106万件)に上ることが日本経済新聞の調査で分かった。既に約63万件の申請が認められ、約2108億円分の免除が決まっていた。生活再建の支援を含め、制度全体の見通しの甘さが浮き彫りになった。

貸付金は総額約1兆4269億円(速報値)に上る。返済は今年1月に始まったが、税金が原資の貸し付けを十分な審査が行われないまま続けてきた構図で、回収が進むかは見通せない。

「生活福祉資金の特例貸付」はコロナ禍の困窮世帯支援策として20年3月に設けられた。貸付額は2人以上の世帯で最大200万円。申請受け付けは22年9月末で終了した。

日経は22年11月、貸し付けや回収業務を担う47都道府県の社会福祉協議会(社協)にアンケートを実施。全てから回答を得た。

返済免除の申請は同10月末時点で約106万件に上り、貸し付け全体の約32%を占めた。住民税非課税の低所得世帯など免除決定はこのうち約63万件(約2108億円)。調査では約5万件(約151億円)が債務整理手続きに入り、うち約1万4千件(約44億円)の自己破産が決まっていることも判明した。

背景にはスピードを優先し、審査や生活支援が十分にできなかったことがある。生活福祉資金は本来、社協職員が事前に使途や返済計画を聞き取るが、特例貸付は迅速に貸し付けるため申請書類の提出のみだった。東京都社協の担当者は「事務処理と電話対応に追われ、相談に応じる余裕がなかった」と振り返る。

日本福祉大の角崎洋平准教授(社会福祉学)は「初期対応としては適切だったが、コロナ禍の長期化で制度の延長が繰り返される中、国は社協側の態勢強化を十分図ってこなかった」と指摘。「収入見通しを踏まえた返済計画づくりが必要で、自治体やNPOとの連携も欠かせない」と話す。