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Z世代 政治のプレーヤーに 少子化や生きづらさ「当事者の声を」

現在の日本の政治は男性が中心だ。女性議員の割合は国会、地方議会とも15%程度にとどまり、女性議員がゼロという議会もある。そんな状況を打開しようとする動きが、1990年代後半以降に生まれたZ世代を中心に広がっている。

 

昨年11月、政治におけるジェンダーギャップの解消を促し、女性の選挙立候補を支援する「FIFTYS PROJECT(フィフティーズ・プロジェクト)」が初会合を開いた。地方選への立候補を目指す20~40代の政治未経験の女性が20人程度集まった。

立候補予定地や所属政党などはバラバラだ。三バン(地盤・看板・カバン)がない中でどう選挙活動をするかという悩みは共通する。「選挙にいくらかかる?」「選挙活動中にセクハラはなかった?」。現職の女性地方議員への質疑では、不安の声もあがった。

参加した塩崎江里さん(27)は2025年の地方選への立候補を目指す。きっかけは昨年の参院選だ。SNS(交流サイト)で候補者や現職議員を見て、政治に関心を持った。「日ごろもやもやとしていることを言語化して訴えてくれる政治家が意外といることに気づき、日本の社会に初めて希望が持てた」と話す。

ちょうどその頃、選挙に出てみないか、と関係者から声がかかった。「私も誰かの希望になれるかもしれない。自分が政治のプレーヤーになろう」と決意したという。

プロジェクトを立ち上げたのは、一般社団法人「NO YOUTH NO JAPAN」代表理事の能條桃子さん(24)ら、20代だ。「若者が抱える生きづらさ、少子化、教育などの問題について、政治の世界に当事者がいればその声がより反映される」と、若者に政治参加を促す。

選択的夫婦別姓や同性婚はいまだ実現せず、男女の賃金格差やセクハラは解消されていない。性教育や緊急避妊薬、人工妊娠中絶へのアクセスは限られているというのが現状だ。「まずは20代、30代の地方議員の女性比率3割を目指す」との目標を掲げる。メンバーの一人、伊藤花さん(25)は「プロジェクトを通して政治に参加したい人を支えられる」と話す。

日本の議会における女性の割合は圧倒的に小さい。都道府県議会議員や市区議会議員で女性の割合が3割を超えるのは東京都のみ。町村議会議員で3割を超えるのは大阪府内の議会のみだ。

一方、女性議員がゼロの市区町村議会は全体の16%を占め、福島県、奈良県、青森県では3割以上の議会で女性議員がいない。選挙の結果とはいえ、これでは人口の51%を占める女性の意見が政策に反映されにくくなる。

Z世代を中心とする若者らは社会問題への関心が高い。生まれたときからネットが身近だっただけに世界の動きにも敏感だ。欧米に比べて性別役割分業意識が根強く、男女格差の大きい今の社会を変えたい、との思いは強い。

支援の動きも広がっている。村上財団もその一つだ。女性政治家を増やすための「パブリックリーダー塾」を立ち上げた。20人の募集に対し、約200人が応募。20歳から39歳までを迎え入れて勉強会を開くほか、SNSを活用し、塾員同士でコミュニケーションを取る。

10代の応募者も多かったことからユース枠を設け、勉強会の一部をオンライン受講可能にしている。代表理事の村上フレンツェル玲さん(28)は「女性が圧倒的に少ない現状では互いに励まし合い、知識や情報を共有できるフラットなコミュニティーが大きな力になる」と話す。

大学院生のコーエンズ英理さん(24)は、就活を機に政治参加への意識が高まった。国家公務員試験で官庁訪問した際、面接官はほぼ全員が男性。「政策を作る場がこれでは、自分たちの問題が問題として浮上してこない」と危機感を抱いた。しかも官庁訪問は終電ギリギリまで続く。官僚の働き方にも見直しが必要と感じた。今春の統一地方選では「選挙とはどんなものか、何かしら関わることで、現実の課題と向き合いたい」。

町田彩夏さん(27)は高校生の時「女のくせに生徒会長に立候補するなんて生意気だ」と教員に言われたことをきっかけにジェンダー問題にとりくむようになった。女性議員を増やすためのトレーニングを提供するパリテ・アカデミーのトレーナーとして女性候補者の養成にも携わり、地方選も「価値観が合う人を応援したい」と話す。

お茶の水女子大の申琪栄教授は、若者らが政治のプレーヤーを目指す動きについて「新型コロナウイルス禍で自分が社会に守られていないという危機感を抱いたのではないか。自分の人生や命と直結する政治が他人事ではなくなった。オンライン勉強会などで情報や仲間を得る機会も増えたことで、具体的な活動につながった」と分析する。

4月には50以上の道府県、政令市で議員選挙が予定されている。Z世代は新たな風を起こせるだろうか。