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歴史×データ 1933年、アインシュタイン亡命 「移民の国」米も2つの顔

同年、母国ドイツで政権を掌握したナチスによるユダヤ人迫害から逃れるためだった。

 

39年、アインシュタインはハンガリー出身のユダヤ人物理学者シラードらがルーズベルト大統領に送った原爆開発を促す書簡に署名した。開発計画には直接関わらなかったものの、日本に2つの原爆が落とされた自責の念に駆られ、55年に亡くなるまで核兵器廃絶の活動に身をささげた。

国を開いて積極的に移民を受け入れてきた米国。1人の天才の亡命先が米国だったことが、大戦後の世界の秩序に一定の影響を与えたといっても過言ではないだろう。

米国はアインシュタインに限らず、世界から頭脳と労働力を引き寄せ、覇権国家としての地位を確固たるものにした。

その米国にいま、世界の分断が影を落としている。

2021年の永住権の取得者は約74万人と第1次世界大戦直前の1913年より4割少なかった。新型コロナウイルス禍で国境を閉じた影響もあるが移民への不寛容も目立つ。トランプ前大統領はコロナを「中国ウイルス」と呼び、アジア系住民へのヘイトクライム(憎悪犯罪)が相次いだ。

外国出身者を成長の原動力にしてきた代表例はスイスだ。人口900万人弱の欧州の小国には巨大な多国籍企業が集積する。ネスレの創業者アンリ・ネスレはドイツのフランクフルト出身。腕時計の世界大手、スウォッチグループの創業者、ニコラス・ハイエク氏はレバノン生まれだ。

世界企業番付「フォーチュン・グローバル500」22年版のスイス企業の売上高の合計はスイス全体のGDP(国内総生産)に匹敵し、米国(約5割)や日本(約6割)を大きく上回る。利益をみるとGDPの1割強に相当し、米英の2倍以上の水準になる。京都大学の黒沢隆文教授は「政治的な安定を求める人が欧州各国から流入し、多様な人材が働きやすい環境が形成された」と指摘する。

国を開くか閉じるか。分断が進む世界で、国家は古くからの課題に改めて向き合っている。