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分断の時代 私たちがつなぐ 主張と思いやりの対話を 米ブリッジUSA最高経営責任者(CEO) マヌ・ミール氏

新型コロナウイルス下の経済格差、ロシアのウクライナ侵攻、自国中心主義など世界のあちこちに深刻な分断が表れている。社会の連帯感を取り戻すにはどんな目標や行動を醸成していくべきか。多様な社会課題について国内外で活躍する20~30代のリーダーに分断解消への取り組みを語ってもらった。

どうすれば自分と全く違う人間と分かり合えるのか――。大学1年のころ、保守的な思想で知られる著名人の来校をめぐり、母校で大規模な抗議活動が起きた。身近な場所での「分断」の理由を知るため、対話クラブをつくった。いまでは50の大学・20の高校に支部を持つ全米最大級の学生向け対話団体に育った。欧州やアフリカにも活動の輪が広がっている。

集まっているのは政治的な分断に疲れ、修復を願う若い世代だ。学内の問題をはじめとする議題は、参加者らが決める。円をつくるなど話し合う位置は進め方に合わせ変わるが、発言を妨害せず敬意を払うようにする。2022年の9~12月には約3500人が対話プログラムに参加した。

歴史上、米国には常に分断が存在してきた。多様な人種や価値観を持つ人が集まるため、各自の主張が強く争いに発展しやすい。

人は生活が苦しく先行きが不透明になると、不安感から極端な意見に加担したり妄信したりする傾向にある。米国は新型コロナウイルス禍で苦しみいらだった。くすぶる分断の火種は、人々の違いを必要以上にあぶり出すSNS(交流サイト)の時代と重なり、分断は極まったようにみえる。

だが修復は可能だ。分断は他者と「分かり合えない」と感じた時から始まる。ブリッジUSAのプログラムでは、説得ではなく相互理解を目指して話し合う。大事なことは3つだろう。対話を通して自分自身を理解すること、批判をされても自分の意見を主張できるようになること、そして意見の異なる相手への思いやりを持つことだ。

社会の分断は個人ではどうしようもない問題のようにも思えるが、そんなことはない。まずは普段話さないような人と10分間立ち話をしてほしい。「休日は何をしているの」といった質問から始めるといい。

一方、ひとりで過ごす時間を大切にしてほしい。現代は情報にあふれており、自分を見失いやすい。民主主義の基本単位は人であり、人が不安や怒りを感じれば、社会も同じように反応する。

(聞き手はニューヨーク=弓真名)