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公立高「外国人枠」なし73% 進学せぬ子、日本人の10倍

高校で外国人受け入れ枠の導入が進んでいない。2023年の入試で全国の公立高の73%が特別枠を設けないことが日本経済新聞の調査で分かった。日本語が得意でない生徒にとって一般入試は容易でない。中学卒業後に10%が進学しておらず、全中学生の10倍の水準だ。新型コロナウイルス下の入国制限緩和で外国人労働者受け入れが再び拡大しており、子どもが進学しやすい環境を整える必要がある。

高度・専門人材の家族として来日した子どもが制約なく働くには、高卒資格が求められる。文部科学省は指針で自立には「高校教育が重要」と指摘。特別枠の設定や試験教科の軽減などを各地の教育委員会に求めたが、必要性が認識されず、指導体制の不安もあって対応しない教委や学校が多い。4月から高校で日本語を教える授業が単位として認められる。指導の充実を目指す一方で、"入り口"は狭いままだ。

22年11月中旬、大阪府立東淀川高校(大阪市)で外国出身の生徒8人が分かりやすい日本語を使った特別授業を受けていた。府内では同校など8校が外国人向け特別選抜を実施し、22年は定員の8割にあたる計約90人が合格した。フィリピン出身のカリーノ・カートさん(18)は「漢字がほとんど分からず一般入試では入れないと思い、この高校を選んだ」と話す。

こうした枠がない地域は多い。日経新聞が22年12月、各都道府県教委に23年入試について聞いたところ、一般入試と別に外国人生徒の定員枠や特別選抜を設けるのは27都道府県だった。茨城は県内の全公立高に特別枠を設けるが、北海道は札幌市立高1校のみ。全国では導入は約920校で、全体の約3400校のうち27%にとどまった。

枠があっても、受験資格を東京や埼玉などのように「来日3年以内」に限定する例が目立つ。中学に入る前に来日した子どもは対象外となる。

外国語の表現を十分理解するようになるには5年ほど必要とされる。NPO法人「多文化共生教育ネットワークかながわ」(横浜市)の高橋清樹事務局長は「3年たっても日本語力が十分でなく、一般入試は困難な生徒が珍しくない」と話す。

文科省によると、20年度卒業の中学生で高校や専修学校に進まなかったのは1%未満。一方で「日本語指導が必要」と認定された生徒は10%に上る。授業についていけず中退するケースもあり、21年度の中退率は5.5%と全体(1.0%)との開きは大きい。

高卒資格は将来を左右する。外国人材の配偶者や子らが対象の在留資格「家族滞在」で働けるのは原則、週28時間以内。高卒なら就労制限がない在留資格に切り替えられ、生活基盤を築きやすい。

米国は高校まで義務教育で英語力にかかわらず進学できる。カナダやオーストラリアは中学校の成績証明書などでの選考が一般的で英語力が不十分でも公立高に進める。

東京外国語大の小島祥美准教授は「小中学校段階の日本語教育は自治体間の格差が大きく、高校入試で思考力を評価するには工夫が必要。グローバル人材に育つ可能性を秘めた子どもが高校教育からこぼれ落ちるのは日本社会にとっても損失だ」と話す。

(外国人共生エディター 覧具雄人、佐野敦子、田辺アリンソヴグラン)