· 

円高「1ドル=122円も」 市場は日銀追加利上げを警戒 2023展望(中)

日経ヴェリタスが新年アンケート調査で67人の市場関係者に円の対ドル相場の予想を聞いたところ、23年内の高値平均は1ドル=122円で、「120~126円未満」と答えた人が合計で全体の7割に達した。円相場は22年、32年ぶりに151円台まで下落したが、状況は一変しそうだ。

円相場は政府・日銀による円買い・ドル売り介入の効果などで、12月中ごろには137円台に落ち着いた。その水準で新年を迎えるかと思われた20日、日銀は長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)の運用を見直し、長期金利の変動許容幅を従来の0.25%から0.50%に引き上げると発表した。

日銀の追加利上げで、長期金利0.68%まで上昇へ

この事実上の利上げは「内容こそ想定内だったものの、タイミングは市場にとってサプライズ」(JPモルガン・チェース銀行の佐々木融市場調査本部長)だった。日米金利差が縮小するとの観測から、円相場は一時130円台まで上昇した。

23年に再び円安が進む可能性はないのか。市場関係者が予想する安値平均は141円で、下落幅は限られそうだ。政府・日銀の円買い介入については87.7%が「23年に実施する可能性はない」と答えており、円相場の自律的な上昇を見込んでいることになる。

金利の高い通貨は通常、外国為替市場で買いが集まる。市場関係者の多くが23年、さらなる円高を予想する理由は金利の上昇観測だ。「日本の長期金利の上限」を聞いたところ、平均は0.682%だった。「0.7%以上」と答えた人が半数を超えた。

上限が0.50%を超えるということは、日銀がさらなる政策修正に踏み出すか、日銀が長期金利を制御できなくなるかのどちらかだ。23年12月に上限が0.9%になると予想した、岡三証券の松本史雄チーフストラテジストは「7~9月期中のYCCの撤廃、10~12月期のマイナス金利の撤廃を見込む」という。

市場関係者が予想する日銀の次の一手(2つまで回答)は「YCCを見直し、マイナス金利を解除」が最多の42.2%、「YCCを見直し、変動幅の拡大」が2番目に多く39.1%だった。金融政策の「現状維持」は26.6%にとどまった。

日銀副総裁の雨宮正佳氏(左)と大和総研理事長の中曽宏氏

その金融政策に大きく関わるのが、23年4月に任期が切れる黒田東彦総裁の後任人事だ。長期金利の変動幅をさらに広げるのか、短期金利の一部を0.1%のマイナスにする「マイナス金利政策」の解除にまで踏み込むのかなどは、次期総裁の判断に委ねられる可能性が高いためだ。

「次期総裁に誰になってほしいか」を聞いたところ、現副総裁の「雨宮正佳氏」が45.3%と最多。「現行の枠組みを最も理解し、ショックなく体制移行が可能」(みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミスト)、「政策運営経験の豊富さに加え、現行の金融政策実施の経緯などに精通」(太陽生命保険の清友美貴運用企画部長)などの理由が多かった。

2番目に多かったのが、前副総裁で大和総研理事長の「中曽宏氏」の34.0%。「金融市場に精通し国際派」(オフィスFUKAYAコンサルティングの深谷幸司代表)、「黒田総裁の政策を市場にショックを与えないよう修正していく手腕が期待できる」(楽天証券経済研究所の窪田真之チーフ・ストラテジスト)などの理由が上がった。

米金利のピークは年前半、後半に利下げも

円を含む外為相場、そして世界の株価に大きな影響を与えるのが米国の金融政策の行方だ。米連邦準備理事会(FRB)は急激なインフレを受けて、22年3月に利上げを開始した。だが、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げ幅をこれまでの0.75%から0.5%に縮小し、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25~4.50%とした。

パウエル議長は会見で金融引き締めに積極的な「タカ派」的姿勢は維持したものの、23年は利上げ幅がさらに縮小したり、利上げを休止したりする可能性が高い。

記者会見するFRBのパウエル議長(ワシントン)=AP

市場関係者の予想では、FF金利のピークは「23年1~3月期」との見方が最多の61.3%、「同4~6月期」が33.9%で2番目に多かった。ピークの金利は「5.00~5.25%」が最多の61.9%、「4.75~5.00%」が19.0%で2番目に多かった。

市場関係者の予想通りなら、米利上げはすでに最終段階で、23年前半に終わることになる。「同10~12月期」には利下げを始めるとの回答も50.8%に達した。三菱UFJ銀行の井野鉄兵チーフアナリストは「FRBは景気への配慮に軸足を移し、年終盤には利下げに転じる可能性がある」と見る。

米国が利下げに動けば、世界の株式市場にとって好材料となる。米利下げは日米金利差の縮小につながり、円高・ドル安に拍車をかける可能性もある。

利下げの根拠は原油価格の下落などでインフレが収束に向かい、消費者物価指数(CPI)の上昇率が徐々に縮小するとの期待だ。22年2月に始まったウクライナ紛争が原油価格を押し上げていたが、「ロシアの孤立が進み紛争の終息が意識され始める」(三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之チーフストラテジスト)との声も出ていた。

米CPIの上昇率を四半期ごとに聞いたところ、23年1~3月期は56.9%が前年同期比「6%以上7%未満」と、22年11月の前年同月比の上昇率(7.1%)より低下すると予想した。23年10~12月期は「3%以上4%未満」の予想が48.1%で最多だった。ただ、FRBが目標とする2%までは下がらない形で、インフレの火種が残っている段階で実際に利下げに転じるかは不透明だ。

(越智小夏)