戦争や国家の分断はどの時代にもあった。
1000年の単位で歴史をひもとくと、グローバリゼーションの邪魔になるものはすべて崩壊している。日本では鎖国を続けた徳川幕府は1867年に大政奉還した。
戦争や国家間の対立は一時的にはグローバリゼーションの弊害となるが、その時代の政治家と、その後の世代の政治家は違う。つまり「昨日の敵はきょうの友」になる可能性を秘めている。日本電産は約70社の企業買収をしてきたが、この言葉は相手を口説き落とす殺し文句で、これは国も企業も同じだ。
相手が求めるモノを与えられれば必ず仲良くなれる。激しく戦った競争相手とは普通の関係よりももっと仲良くなれる。
政治とビジネスは切り分けて考えるべきだ。進出先で政治に関するコメントを求められることが多いが「我々はビジネスマンやないか」とノーコメントを決め込む。ビジネスマンとしてお互いが豊かになるためにもっと良いモノを作って世界で売ろうという話をする。
国同士の仲が悪くても、工場を作れば現地で働く人たちと仲良くなれる。彼らには日本の技術を身につけてもらい、給与も支払う。そういう日本企業の活動が日本への親しみを生み、国と国をつなげる力となる。
日本電産は45カ国で事業を展開している。グローバリゼーションを推進するための企業の役割は政治の役割よりもずっと大きいと思う。
豊かな国から貧しい国に豊かさを広げることがグローバリゼーションの本質だ。豊かさへの人々の欲望が原動力だ。
かつて中国は沿岸部から経済を発展させ、その後に内陸部に波及させようとした。こうした現象が国家間でも起きている。結局は世界は平等に向かい、生活水準も平等に向かう。
もちろん恩恵は一気には広がらない。タイムラグは必ずある。ただ現代は通信や交通網が発達し、グローバリゼーションの時間軸を早めている。
世界の時間軸はここ10年で2倍から4倍、8倍へと加速し、今後も加速し続ける。日本電産は1992年に中国に進出したが、中国のスピードは20年で100倍になったのではないか。
誰もが世界を知ることができるようになる。豊かさへの欲望がある限り、世界の距離をどんどん縮めようとする。この欲望を満たして世界をつなぐのがビジネスだ。
大企業だけでなく、中小企業も世界に出ていく。地方の中小店舗が日本中だけでなく、世界にも商品を売れる時代が来た。広大だった世界はどんどん小さくなる。グローバリゼーションという言葉がそもそも意味を持たない時代がやってくる。
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