円の対ドル相場の年間値幅は約38円で、これはリーマン・ショック時や、前回円買い介入があった1998年も上回る。最大の要因は高インフレによる米国の急速な利上げでドル高が進んだことだ。
日米の金利差が市場の想定を超える勢いで開いた。7月以降のドル円相場と日米実質金利差の相関係数をとると、完全な正の相関の1に近い。金利差が相場を動かしていたといえる。
加えて、原油高などで日本の経常収支が悪化し、円安が進んだことも大きい。米利上げによるドル高と、実需面の円安が重なり38円もの変動幅につながった。
足元では円安基調が一服している。これは市場で米金融引き締めの打ち止め期待が高まり、米金利が下がりつつあるためだ。ただ、この期待は先走りすぎだ。
賃金や家賃など、サービス価格のインフレは粘着性が強く、物価上昇率が明確に抑制されるのは23年後半になるだろう。それまでは引き締めの手は緩められない。米政策金利は5月ごろまでかけて5%台まで引き上げられ、利下げは24年になるとみる。
23年初めは日銀の総裁人事やその先の緩和修正に注目が集まり円高が進む可能性がある。ただその後は再び米利上げに視線が移り、1ドル=135円程度で底堅く推移するだろう。年後半に入ると米景気が減速し始め、1ドル=128円ほどまで円高が進むとみる。
おがわ・まき JPモルガン・チェース銀行の為替取引、シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)での市場調査などを経て16年8月から現職。
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