2022年の日本株は世界的なインフレや各国中央銀行の金融引き締めに翻弄された。通信や医薬など、景気に業績が左右されにくいディフェンシブ銘柄の株価が伸びた。新型コロナウイルス禍からの経済活動の再開が進みインバウンド(訪日外国人)関連銘柄なども買われた。一方、景気減速にともなう需要減が懸念された半導体関連は下げが目立った。
東証プライム上場企業のうち時価総額上位の顔ぶれをみると、ディフェンシブ銘柄への資金流入が目立つ。21年末は時価総額5位だったNTTはトヨタ自動車に次ぐ2位に、11位だったKDDIは7位となった。主力の抗がん剤が好調だった第一三共の時価総額は21年末比で5割増えた。
銀行株も順位を上げた。岡三証券の松本史雄氏は「日銀が大規模緩和の修正を発表したことを受け、収益性の改善期待がでた」と話す。昨年9位だった三菱UFJフィナンシャル・グループは5位に、26位だった三井住友フィナンシャルグループは10位に浮上した。
商社株も好調だった。資源価格の上昇が業績の上振れにつながるとの期待が高まった。不安定な相場環境が続く中、高配当株の一角として物色された面もある。11月には著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイが国内5大商社株を買い増したと明らかになったことも意識された。昨年24位だった伊藤忠商事が16位に、25位だった三菱商事が18位に入った。
21年に上昇が目立った半導体関連株はふるわなかった。半導体製造装置の東京エレクトロンの株価は年間で4割安となり、時価総額順位は6位から21位に後退した。8位だったシリコンウエハー大手の信越化学工業は15位となった。景気悪化で世界的に半導体需要が弱まるとの懸念が強まった。米中対立も重荷となった。
株価上昇率ではチタン2社が上位に入った。航空機エンジンなどで使われる高機能チタン製品を手がける大阪チタニウムテクノロジーズの株価は21年末から約5倍と大幅上昇した。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けチタン製品の需給が逼迫し、製品の値上げが進んだ。
新型コロナ禍から経済活動の再開が進み、サンリオが9割高となるなど、インバウンド需要の回復を期待した買いも入った。百貨店の高島屋と三越伊勢丹ホールディングスは7割高となった。
一方、米長期金利の上昇で相対的な割高感が意識されやすいグロース(成長)株の下落が目立った。インフォマートやメルカリなどバリュエーション(投資尺度)の高いIT(情報技術)株が売られた。メルカリの22年6月期はコロナ禍の巣ごもり需要の剝落などを受け、最終赤字に転落していた。昨年には1兆円を超えていた時価総額は足元で4347億円と半分以下に沈む。
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