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市場VS日銀、攻防年越し 長期金利の上昇回避 国債買い、むしろ増加

2022年の債券市場のハイライトは日銀の金融緩和の縮小だった。日銀が市場の力に屈し、長期金利の上限を引き上げた。さらなる政策の修正をにらんで国債売りは続いており、金利の急上昇を嫌う日銀の防衛線はむしろ広がっている。市場と日銀の攻防は来年も続く公算が大きくなった。

 

「なんで0.5%まで上昇しないんだ。その理由を教えてくれ」。ある外資系証券の債券トレーダーの下には、外国人投資家からの問い合わせが相次いでいる。

日銀は20日、長期金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げた。金利は自然と上昇し、21日には0.48%を付ける場面があった。

市場では日銀が上限をなくせば長期金利は0.5%を上回るとの見方が大勢で、長期金利が0.5%まで上昇してもおかしくない。そうならない背景には日銀の国債買い入れの増額がある。

日銀は政策修正と同時に国債の月間買い入れ額を7.3兆円から9兆円に引き上げた。日銀の国債買い入れ計画をもとに、SMBC日興証券の奥村任金利ストラテジストが試算したところによると、10年債や20年債などは来春まで日銀が国債の新規発行量をほぼそのまま吸収できるような内容になっているという。

29日は2年債と5年債を対象に、指定した利回りで無制限に買い入れる「指し値オペ」を2日連続で実施した。それぞれの利回りは0.03%と0.24%で、28日と同じ水準に設定した。この水準以上には金利を上げさせないという強い姿勢を示した。通常の買い入れと指し値オペを組み合わせて国債を市場から吸い上げている。

日銀の今回の政策修正は事実上の利上げだ。それなのに、あえて日銀が国債の買い入れを増やしているのはなぜか。

ある債券トレーダーは「日銀は長期金利が上限に到達することを避けるのに必死だ」とみる。上限が0.25%のときのように、いったん上限に到達してしまうと、無制限で買い入れる指し値オペへの応札が増え、政策の限界を意識した国債売りを仕掛けられることになりかねない。

 

また、2年債や5年債の利回りが上がってしまうと、10年債の割高さが目立ち、それも売り材料にされる恐れがある。2年債や5年債の利回りを機動的に抑えることで、金融政策の誘導対象とする10年債利回りに上昇圧力が集中するのを避ける狙いとみられる。

この結果、日銀の国債市場への関与は強まっている。バークレイズ証券の三ケ尻知弘マクロ・トレーディング本部長は「日銀の買い入れ増で、市場参加者が少ない年末要因を勘案しても流動性は落ちている」と指摘。「市場機能という意味ではむしろ悪化している」という。

国債売りを続けている投資家からは「買い入れを増やすのは長期金利の上限引き上げとは矛盾する行為で、持続性は限られる」(ケイガン・キャピタルの中川成久最高投資責任者)との声が漏れる。

日銀が今回市場の圧力に屈したのは、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)では説明できない水準に金利を抑えつけようとしたためだ。矛盾を抱える行為が長続きしないことは日銀の政策修正自体が示している。日銀のこうした姿勢が続く限りは、来年も国債売りが続くことになる。

 

(佐藤俊簡)