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2023混沌を読む(4)金融市場、影の銀行に高金利リスク 元ゴールドマン・サックス ジム・オニール氏

住宅価格の下落や暗号資産(仮想通貨)交換業大手、FTXトレーディングの破綻などで金融市場への警戒が強まっている。危機の芽はどこに潜むのか。ロシアや中国など新興4カ国を「BRICs」と名付けた米ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの元会長、ジム・オニール英上院議員に聞いた。

 

 

英国債から教訓

 

――金融引き締めによる金融市場への影響をどのように考えますか。

「金融引き締めが進むと、金利上昇に伴って金融商品の価格が不安定となり、市場の様々な分野に大きな問題が生じる。1994年に米連邦準備理事会(FRB)の利上げを確信していた投資家でも、大きな損失を出した経験をよく覚えている。(リーマン・ショック後)14年間続いた金融緩和局面から抜け出そうとする現在では、リスクの所在を前もって予見することはさらに難しい」

――既存の金融規制から外れた「影の銀行(シャドーバンク)」の危険性が指摘されています。

「ヘッジファンドなどのシャドーバンクの一部は高すぎるレバレッジ(借り入れによるてこ)をかけた運用をしており、金利上昇に脆弱だ」

「2022年の英国債暴落からは世界的な教訓を引き出せる。シャドーバンクの一つである英年金基金が、高い運用成績を得るために大きなレバレッジをかけていたことが明らかになった。政策当局も気づいておらず、英国は(投げ売りで)大きな金融危機に陥っていた可能性があった」

 

日銀緩和に出口

 

――金利上昇で価格が急落しやすい金融資産は何ですか。

「特別買収目的会社(SPAC)や仮想通貨は投機性が高く、手を出すべきではない。バリュエーション(企業価値評価)が非常に高いプライベート・エクイティ(PE)やベンチャーキャピタル(VC)などの未公開市場への投資も細心の注意を払うべきだ」

――金融緩和の修正を始めた日本のリスクをどのように考えますか。

「23年は日本銀行が量的緩和からの脱却へ具体的に動く可能性がある。金融緩和の期間の長さを考えると、まったく新しいリスクが生まれる。ソフトバンクグループ(SBG)の世界のVC市場への積極的な投資が気がかりだ。日本の金融環境が厳しくなれば、銀行を通じた資金調達も難しくなるだろう」

――BRICsの名付け親として、ロシアや中国がもたらす地政学リスクをどうみていますか。

「私がBRICsの枠組みを作ったのは、当時から民主主義国と非民主主義国が何とか共存しなければならないという問題意識があったためだ。近年は対立が鮮明となりつつあるが、ロシアや中国とも互いの利益を追求する努力をすべきだ」

「現在の新興国では、南アメリカやアフリカの一部の国の停滞とは対照的に、アジアの発展に目を見張るものがある。特にインドネシアとベトナムを有望とみている」

(聞き手はロンドン=大西康平)

 

Jim O'Neill  2013年まで米ゴールドマン・サックスでチーフエコノミストなどを務める。英財務省の政務次官や英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の会長も歴任した。熱烈なサッカーファンとしても有名。