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台湾、シェルター10万カ所整備 人口の3倍分、日本企業は駐在員の域内退避探る

有事が起きても日本へすぐには退避できない可能性があるためだ。台湾当局も人口の3倍超を収容できる10万カ所以上のシェルターを全土で整備するなど、安全対策を練っている。

 

台湾には現在、約2万人の在留邦人がいる。出張者や観光客を含めると、有事の際には、合計約4万人の邦人の安全確保が必要とされている。

「過去にはないレベルの邦人数の退避と、邦人保護が求められる」(日本の外交関係者)ため、台湾に1000社以上が進出する日系企業も、退避計画の具体化を急ぐなど神経をとがらせている。

各社の間で大きな課題として浮上しているのが、有事の際に駐在員やその家族らの海外退避が間に合わない場合の対応だ。

有事において、約4万人の日本人が速やかに日本に帰国するのは困難だ。例えば民間航空機の場合、現在はコロナ禍を経て大きく減便され「増便は容易ではない」(日本の大手航空会社関係者)。邦人全員を台湾から退避させるには「現行の輸送能力では1カ月はかかる」(同)状況にある。

邦人約4万人のうち、早期に日本に帰国できるのは一部とみられ、航路封鎖などで長期に帰国できない事態も想定される。各社にとっては、有事において社員と家族を台湾域内でどう安全に退避させるかが重要になる。

 

7月にはシェルターを使った避難訓練が行われた(台北市内)

7月にはシェルターを使った避難訓練が行われた(台北市内)

台湾域内の緊急退避先として期待されるのが、全土で設置が進むシェルターの存在だ。有事の際にシェルターに一時退避をして空爆などの危険から逃れ、当面の安全を確保して事態が落ち着くのを待つ方法だ。

台湾内政部(内政省)の警政署によると、有事などを想定し、全土に約10万5000カ所のシェルターの整備が進んだ。全体の収容能力は合計約8600万人に上る。台湾の定住人口(外国人含め約2400万)の3倍超に相当する。

シェルターの多くは空襲などから逃れる一時的な退避を想定したもので、平時はビルの地下駐車場などを兼用する場合が多い。台湾では対中国をにらみ、1970年代からシェルター設置に関する建築基準の関連法の整備が進められてきた。

同法では、建物の建築面積などに応じた大きさのシェルターの設置が義務付けられている。学校などの公共施設のほか、地上6階以上のオフィスビルやマンションなどが対象となっている。

邦人のシェルター利用について、日本政府と台湾の間で特別な協定は結ばれていない。だが所管の内政部は「外国人を含めシェルターは誰でも自由に利用できる」としている。日系半導体関連メーカーの現地トップは「オフィス近くのシェルターの場所を複数、確認済みだ」と話す。

内政部はシェルターの存在を広く一般に知らせようと昨春、新たなスマホアプリを公開した。台湾全土のシェルターの位置や収容人数が一目で分かるようにした。

一方、日本ではシェルターの整備はあまり進んでいない。ミサイルなどから一時避難できる場所として自治体が指定する施設は全国に5万2490カ所(4月時点)ある。このうち安全性が高い地下の施設は1591カ所で全体の1割未満だ。