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デジタル円・メタバース・・・解剖フィンテック、渾身の5本

2022年に日経電子版・金融セクションで連載を始めた「解剖フィンテック」。個人金融資産を見える化するサービスからデジタル通貨、メタバースなどを取り上げ、フィンテック企業の成長性や課題も含めて深掘りしてきました。読者の反響が大きかった渾身の5本を紹介します。

家計「2000兆円」見える化 スマホで預金・投信一覧

金融とテクノロジーを組み合わせたフィンテックが金融の風景を変えている。巨大な金融機関が独占してきた金融サービスに風穴を開け、効率化や利便性の向上を武器に垣根を越えた競争が生まれた。個人がスマートフォンで異なる金融資産を一覧し、最適なバランスを考える。お金の「見える化」は2000兆円の家計資産を躍動させる可能性を秘める。

新潟市に住む29歳の男性会社員は、マネーフォワードの個人資産管理アプリ「マネーフォワードME」で家計の収支をチェックするのが日課だ。銀行や証券などの口座と連携し、資産全体を一覧できる。家計資産が現金に偏っていることに気づき、投資の比重を高めた。「お金の流れが見える化され、最適なバランスを考えられるようになった」という。

デジタル円、23年度にも実験最終段階 決済効率に期待

クレジットカードで最長1カ月程度かかっていたお店への着金期間がゼロに――。中央銀行デジタル通貨(CBDC)を使う世界では、お店で買い物をするとき、現金と同じように支払いと同時に着金できる。決済効率が上がり、お店側の資金の流動性が高まる。利用者にとっても送金などの費用が安くなることが期待できる。

新興国だけでなく、欧米も導入にアクセルを踏み始めたCBDC。日銀も現在、実証実験を進めている。第1フェーズでは発行や流通といった基本的な機能を検証し、4月に始まった第2フェーズでは自動送金予約などのサービスが機能するか検証する。早ければ来年度にも、民間事業者や消費者らが参加する最後の第3フェーズに入る。

メタバース、混迷の先手争い みずほが決済で活用検討

金融機関がメタバース(仮想空間)を活用したサービスを模索し始めた。仮想空間上で経済活動が活発化すれば商取引やデジタル決済で金融の役割が増す。本人確認や課税の体系など課題は山積しているが、顧客との接点を拡大する有力なツールにもなる。「メタバース×金融」の未来像を探る。

「将来的に現実とメタバースの境界がなくなるかもしれない。金融機能をどう発揮するか可能性を追っていきたい」。2022年7月19日に開いた会見で、みずほフィナンシャルグループのデジタルイノベーション担当の梅宮真副社長は語った。8月に開かれる仮想現実(VR)イベントにみずほ銀行がブースを出す。

後払い決済BNPLに試練 金利上昇で収益鈍化、規制論も

米国など世界で急拡大してきた後払い決済の「BNPL(バイ・ナウ・ペイ・レイター)」に逆風が吹き始めた。手数料や利息のかからない分割払いが利用者の支持を集め、アップルなど参入企業が相次ぐ。ただ手軽さが若年層の「借りすぎ」を誘発する懸念に加え、金利上昇や景気悪化でBNPL事業者の収益悪化リスクが高まる。規制強化を求める声もある。

「洋服や家具など、ほぼすべての商品をBNPLで支払っている」。米オハイオ州に住む看護師のステファニー・スコットさん(40)はこう話す。「高い買い物をしても1回で払わなくてすむのが気に入っている」といい、インターネット上でサービスを使いこなす。

営業担当者はAI、DBS大変身 産業銀行がアジア最先端に

人工知能(AI)など最新技術を活用して、顧客に利便性の高いサービスを提供するデジタルバンクが世界で勃興している。デジタルバンクがもたらすディスラプション(創造的破壊)は伝統的な金融の秩序を崩し、既存の金融機関に変革を迫っている。フィンテックの成長性や課題も含めて深掘りするシリーズ「解剖フィンテック」は世界で勃興するデジタルバンクを取り上げる。初回はシンガポールのDBSグループ・ホールディングス。

「米国のA社の株価が過去1年間で、最安値をつけました」。会社員のウォンさんは朝起きると、スマートフォンにDBSから通知が届いていることに気づいた。まだ底値は遠いとみたウォンさんはDBSのアプリを数回タップして保有株を損切りした。その夜、円の安値更新の通知を受け取ると、今度はすかさず円買いに動いた。