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緩和修正でも続かぬ円高 金利差・需給差の岩盤厚く

背景は今春以降の急激な円安・ドル高を先導した金利差と需給差の2つの円売り要因が何ら変わっていない現状だ。日銀の緩和修正は市場に大きな「サプライズ」を与えたが、円買いを拒む2つの岩盤は少しも揺らいでいない。

 

日銀は20日の金融政策決定会合で、長期金利の許容変動幅をプラスマイナス0.25%程度から0.5%程度に広げることを決定。これまで長期金利は一貫して上限を試す動きを続けており、市場関係者は「事実上の利上げ」と受け止めた。市場は予期せぬ政策変更に対し、過敏に反応。円相場は急騰し、前日の1ドル=135円台後半から、動揺が続いた20日のニューヨーク市場では一時130円台半ばを付け、上昇幅は5円を超えた。

だがその後、円買いの勢いは急速にしぼんだ。円相場は会合後の1週間、132円台を中心に行ったり来たり。市場では緩和修正の第2弾を予想する声も増えているが、事前に織り込んで円を買い進めようとする動きは見えてこない。

なぜ円相場はだんまりを続けるのか。理由は明快だ。急激な円安・ドル高を招いた最大の要因である日米間の金利差は日銀の緩和修正にもかかわらず、ほとんど縮んでいない。長期金利差は緩和修正を決めた20日以前の3.3%台から現在もほぼ同水準で推移する。

「世界の長期金利は連動しやすく、日本の金利上昇は米国にも波及する」。JPモルガン・チェース銀行の佐々木融氏は指摘する。しかも米国ではインフレの高止まりを背景に金融引き締め局面が長引くとの観測が根強く、長期金利を支えている。金利差が縮まらない以上、市場参加者は円買いを続けづらい。

 

それだけではない。輸入に伴う円売りと輸出に伴う円買いを比べた、いわゆる円の需給差も大きく開いたまま。財務省が15日に発表した11月の貿易統計によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易赤字額(輸入超過額)は2兆274億円。これで4カ月連続で2兆円を超える赤字が続く。

貿易赤字に伴う需給面からの円売りはヘッジファンドなどによる金融取引ほど機動的に売買されず、円相場を先導して動かすほどの影響力はない。だが需給の円売りは、金融取引のように利益確定のために買い戻す必要がない分、恒常的な円安圧力として残り続ける。

みずほ銀行の唐鎌大輔氏は「来年、日米金利差が縮む場面が訪れるとしても過去最大規模の貿易赤字を背景にした円安圧力は簡単に解消されない」と指摘する。今年の急激な円安の反動から来年は円高方向に振れたとしても、今年の逆回転で円高が加速する展開は考えづらいというわけだ。

為替相場は2通貨間の取引で必ずしも一方の材料だけに大きく左右されない。今後も日銀が緩和修正を続けたとしても、米国の金融政策次第で円相場への影響力は大きく変わる。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は0.5%の利上げを決めた12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で「利下げについては検討していない」と説明した。日銀の緩和修正に伴う円高反転シナリオは、意外と脆弱(ぜいじゃく)かもしれない。

(編集委員 小栗太)