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海外勢、ドル売りに傾斜 売越幅が1年半ぶり水準 円高助長、来年115~125円も

海外投資家がドル売りを強めている。投機筋のドル売越幅は1年半ぶりの高水準となった。米利上げ減速や停止期待が膨らみ、ドル買いを巻き戻す動きが広がる。ドル安進行により2023年に1ドル=115~125円程度まで円高が進むとの見方が出ている。

 

みずほ銀行が米商品先物取引委員会(CFTC)の20日時点のデータを基に集計したところ、ヘッジファンドなどによる円やユーロ、英ポンドなど主要8通貨に対するドルの売越額は87.9億ドルとなり、21年6月以来の大きさとなった。売り越しは6週連続で、前週から46.5億ドル増えた。

米利上げ減速が進むとの観測が強まっている。米金利先物の値動きから金融政策を予想する「Fedウオッチ」によると23年2月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利上げになるとの見方は6割となり、3月で利上げは打ち止めとみられている。22年12月の会合前までは0.5%の予想が多かった。

海外の運用会社などはこうした見方を反映してポジションを構築している。スイスのフォントベル・アセット・マネジメントは11月からドルを売って円を買い持ちする取引を始めた。FRBの利上げが進む23年1~3月期はドル高を予想。その後は「FRBの利下げを織り込みドル安・円高に向かう」(マクロリサーチ部門責任者のスヴェン・シューベルト氏)。今は1ドル=133円前後の円相場が23年末に125円になるとの見立てだ。

英ミレニアム・グローバル・インベストメンツの共同最高投資責任者(CIO)、リチャード・ベンソン氏は10月下旬からドルを売って円を買い持ちするポジションをつくった。「23年は米景気の後退が深刻になり、債券を買う流れが強まる」と予想。米長期金利の低下を主因にドルを売る流れが強まり120円ほどまで円高が進むとみる。

円相場は10月に1ドル=151円94銭を付け32年ぶりの安値水準まで下落。前提には金融緩和を続ける日銀と記録的ペースで利上げを進めるFRBの姿勢の差があった。日銀の事実上の利上げで前提が崩れドル安・円高への動きが強まりやすいとみる投資家が多い。

英Abrdn(旧スタンダード・ライフ・アバディーン)のインベストメント・ディレクター、ジェームズ・エイシー氏は米利上げの減速もありドル安・円高圧力が強まるため「国債の売り持ちと円の買い持ちを解消する予定はない」と明かす。23年は115円までの円高を予想する。

国際通貨基金(IMF)によると23年の米経済の成長率は1.0%と22年見通し(1.6%)から減速する。新型コロナウイルス禍を抜け経済正常化を目指す日本の予想は1.6%で日米の成長率が逆転する見通しだ。

日米の景況感の差に着目するのが、ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、アヌジート・サリーン氏だ。「観光業の活性化などで日本の景気は底堅く円の需要が強くなる」と予想。原油価格は一時に比べ下落しており貿易収支の改善でドル買いの勢いが22年と比べ落ちるとみている。

ドルは対円以外でも弱含むとの予想もある。FRBと対照的に欧州中央銀行(ECB)は0.5%ずつ利上げを続ける構えをみせているためだ。

米ニューバーガー・バーマンのポートフォリオマネジャー、フレディリック・レプトン氏は「ECBと日銀という主要中銀がともにタカ派色を強めているため、幅広い通貨に対してドル安が進む」とみる。ドルの総合的な強さを示すドル指数は103台と6カ月ぶり安値圏まで下落。今後も軟調となる可能性がある。

ドル安と円高の予想が目立つ中、日本経済の構造的な問題は解消されておらず、ドル安・円高は簡単に進まないとみる市場参加者も多い。

JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長、佐々木融氏は23年末の円相場を133円とし現在とほぼ変わらない相場水準になると予想する。輸出競争力が趨勢的に落ちてきており「貿易収支の赤字は23年も拡大しドル買いの需要が大きい状態が続く」と分析する。

22年は115円台から151円台まで円安が進み、その後20円ほど円高に振れた。「日銀の金融政策の先行きという新たな変数が加わってしまった」(外資系証券トレーダー)。23年の為替相場も値動きが大きい展開となる可能性がある。