約7割の株式を160億円程度で買い取り、2023年春にも連結子会社とする。両社の協働で「データを使った新しい金融商品の開発も始める」(三菱UFJ銀行の山下邦裕・決済企画部長)。
カンムは11年の設立。スマートフォンのアプリで氏名や年齢を入力すると、即座にプリペイドカードを発行する。手元の現金が足りなければ最大5万円までカードに入金でき、翌月末までにコンビニエンスストアなどで利用額と手数料を振り込んでもらう。蓄積したデータから個人の挙動を分析し、ひとりあたりの与信枠を決めている。
三菱UFJはカンムの技術を生かし、デビットカードに後払いの機能を載せる。銀行口座の残高が少なくても、一定額まで前借りして買い物できるようなサービスを想定している。銀行の顧客向けに適したシステムを開発する必要があるため、実際にカードを発行するのは数年後となりそうだ。
今回の買収に踏み切ったのは、若年層との接点が薄れつつある現状への危機感がある。高校生や大学生がアルバイトを始めたり、両親から仕送りを受けたりするのに必要な銀行口座の開設で、メガバンクはネット銀行の勢いに押されている。
三菱UFJ銀行では21年度の開設数が70万件程度だった一方、新興勢の楽天銀行は100万件を超える。23年4月には銀行口座を介さず、スマホの決済アプリで給与を受け取れる制度も始まる。若年層を中心に銀行離れが進みかねない。
後払い決済のサービスを手掛けるカンムの主要顧客は10代や20代。過剰消費への不安からクレジットカードの利用をためらい、利用額や場所に応じて決済方法を使い分ける場合も少なくない。
三菱UFJ銀行は若年層の支持を集めるカンムの買収で顧客基盤を広げ、住宅ローンの借り入れや資産運用の相談など中長期的な取引の芽を育てる。カンムの八巻渉社長は27日「新規株式公開(IPO)することになれば、三菱UFJにサポートすると言ってもらっている」と語った。
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