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2023年のマンション価格、株価・金利予測で見通す 20代からのマイホーム考(66)

不動産の価格は金利と株価の影響を受けやすく、中でもマンション価格には特に顕著に表れるとされていますので、これを踏まえて23年の価格トレンドの変化を予想してみたいと思います。

株価と金利の変化量が影響

不動産価格を予想する場合、将来のある時期の価格が現在の価格からどれくらい上がるかや下がるかといった「変化量」を予測するのが一般的です。不動産価格の変化量に最も大きな影響を及ぼすのは、その前月の価格の変化量です。大まかに説明すると、直近で不動産価格が上昇しているなら、翌月も似たような上昇率を示しがちということです。外から力がかからない限り、動いている物体は一定の速度で同じ方向に進み続けるという物理学の「慣性の法則」に似たような動きが不動産価格にも働いているということです。

今回は過去のマンション価格の変化量に加え、株価の変化量と金利がマンション価格に影響を及ぼすと仮定して考えていきます。これまで株価が上がればマンション価格も上がる傾向が見られているので、株価とマンション価格のそれぞれの変化量には正の相関があると考えられます。一方、金利が上がると住宅ローンの返済額が増えるので不動産価格は下がる、というのも一般的に理解できますので、金利とマンション価格の変化量には負の相関があると考えられます。そこで、過去のマンション価格の変化量、株価の変化量、金利がマンション価格にどの程度の影響を及ぼしてきたかについて定量化したいと思います。

7割が収まる予測モデルを導出

今回は09年1月以降の全国のマンション価格指数(国土交通省が公表する「不動産価格指数」のうち、全国のマンションの季節調整値。2010年の平均=100としている)、日経平均株価の月末終値、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りの月末平均値を使い、それぞれの変化量でマンション価格指数の変化量がどのようになるかを推定したところ、以下のような予測式が導出できました。実際のマンション価格指数の変化量の約7割がこの予測式の範囲内に収まるモデルとなっています。

全国のマンション価格指数の変化量
=0.18281+前月のマンション価格指数の変化量×0.70142+前月の日経平均の変化量×0.00019-10年債利回り×11.24

※マンション価格指数と日経平均については、マンション購入者が毎月の数値を細かく把握しているとは考えにくいため12カ月移動平均(その月までの12か月分の平均値)を採用しています。

この予測モデルの意味を考えてみましょう。前月のマンション価格の変化量の約7割が今月の価格変化量に影響しています。日経平均が1000円上がれば価格指数が0.19上がります。10年債利回りが0.1%上昇すると、マンション価格指数は1.124下がるということを意味しています。株価と金利が全く変化しない状態が続くと翌月の価格指数は0.18281上昇し、さらにその翌月は前月の約7割、翌々月はさらにその約7割が価格変化として表れ、最終的には一定水準に収束します。

23年は横ばいか

最近は欧米の利上げで世界景気が失速するのではないか、といわれています。この動きが強まれば日本の株価にも影響が及ぶ可能性は否定できません。一方、金利については日銀が長期金利の許容変動幅を拡大するなどの動きはありましたが、23年に暴騰するということは考えにくく、おおむね現在と変わらないと想定しています。

そこで、次の3つのパターンで考えてみることにします。1つは日経平均が2万7000円程度のまま変化しない場合(予測1)、2つ目は23年12月末まで徐々に下落し09年以降の平均である1万7500円程度まで下がった場合(予測2)、3つ目も徐々に下落し09年の平均である9500円程度まで下がった場合(予測3)を想定して予測してみました。結果は次のグラフの通りです。

来年の株価をどのように予測するかによってマンション価格指数の動向が変わりますので判断は難しいところです。ただ、日経平均がさらに上昇を続けたり、リーマン・ショック並みに暴落したりというのも考えにくいので、23年は予測2の横ばい傾向へのトレンド転換となるのではないかと筆者は考えています。はたして23年はどのような結果となるのでしょうか。

田中歩(たなか・あゆみ)
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。