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FTXの詐術を覆い隠した「トークン」 フィンテックエディター 関口慶太

暗号資産(仮想通貨)交換業大手のFTXトレーディングが経営破綻して1カ月あまり。創業者で前の最高経営責任者(CEO)であるサム・バンクマン・フリード氏が逮捕・起訴され、歴史的な金融詐欺事件に発展した。政治家やプロの投資家はなぜ騙(だま)されたのか。一翼を担ったのがトークンという評価の定まらない金融手法だった。

トークンとは、ブロックチェーン(分散型台帳)を使い企業や団体などが発行するデジタル権利証を指す。FTXは「FTXトークン(FTT)」を発行。FTTの保有者は取引手数料の割引などの特典を享受できた。破綻前には一時1兆円近い時価総額をつけ、日本のFTXジャパンにも上場して取引されていた。

トークンは資金調達に利用されることから疑似株式性がある。FTXはこの性質を悪用した。FTXは19年にFTTをバンクマン・フリード氏が個人所有する投資会社アラメダ・リサーチや、大手交換業者バイナンスなどに販売。アラメダはこのFTTをFTXに担保として差し入れることで、FTXから資金を引っ張り、投融資にあてていた。

株式にはいったん発行した自社株を買い戻せば、流動資産ではなく「自己株式」として計上するルールがある一方、トークンはこうした明確な国際会計基準が未整備だ。FTXは会計監査を受けていなかったが、FTX以外にも不透明なトークン取引はあるとみられる。

長らく資本市場で活躍してきた金融関係者のトークンへの見方は厳しい。みずほ証券で社長を務め、現在は官民ファンドの産業革新投資機構CEOを務める横尾敬介氏は「トークンは価値の裏付けが不安定で、価値の評価が難しい。株式の代替にはならない」と言い切る。

ただ、次世代インターネットであるweb(ウェブ)3においてはトークン発行は欠かせない仕組みだ。ウェブ3では企業・団体が発行するトークンを個人が保有することでサービス開発や運営方針に口を出したり、収益配分の恩恵を受けたりすることを目指しているからだ。

自民党のウェブ3プロジェクトチーム(座長・平将明衆院議員)は15日、ウェブ3政策に関する中間提言の中で「日本公認会計士協会において、関係省庁もオブザーバーとして参加する形で、ウェブ3関連企業、仮想通貨業界団体が協議する勉強会を設置し、必要なガイドライン策定の取り組みを進めることが期待される」と指摘した。

こうした議論を通じて「トークンとは何か」「トークンの評価手法は」という点を突き詰め、会計ルールなどを整備すれば、日本のウェブ3業界は世界に先駆けて社会に受け入れられるウェブ3を実現できる道は太くなりそうだ。

[日経ヴェリタス2022年12月25日号]