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円安のいま海外で働く カナダの飲食店で月60万円超も

求人サイトで海外の求人を検索した人の比率が新型コロナウイルス禍前を上回った。足元の円高進行は一服したものの、円安基調は続いており外貨で支給される給与の魅力が円に比べ相対的に高まっている。高度人材だけでなく現場労働者も海外での求職に意欲を出しており、足元の人手不足感に拍車がかかる恐れがある。

「海外の給与水準を聞いてびっくりした。もともと海外で働いてみたいという気持ちはあったが、円安で背中を押された」。埼玉県に住む20代の看護師はこう話す。10月にオーストラリアのワーキングホリデーに申し込み、2023年10月の渡航を予定している。仕事内容は今後決める。

豪州のワーキングホリデーのビザ申請件数で日本人は21年7月~22年6月で前の年同期比2.4倍の約4600人。留学支援などを手掛けるウィッシュインターナショナル(東京・新宿)によると、円安が急速に進行した今年6~10月のワーキングホリデーへの申込件数は豪州を中心に1~5月に比べ2倍で推移し、一段と人気が高まっている。

ワーキングホリデーや留学の支援サービス「スマ留」を運営するリアブロード(東京・新宿)でも22年10月のワーキングホリデーに関する相談件数が約370件と前年同月比4倍に急増した。コロナ禍前の19年同月比でも2.9倍の水準だ。同社を通じてカナダに留学した男性は日本食レストランの調理で週5日、1日あたり10時間働き月6000~7000カナダドル(約58万~68万円)を稼いでいるという。「物価も高いが日本に送金するメドもたてている」とする。

海外企業が割安な日本の働き手に目を向けるケースもある。国をまたぐテレワークの支援サービスを手掛ける米ディールでは、日本人を求める米新興企業からの依頼が急増している。9~11月は円安が進行する前の3~5月に比べ6割増の日本人の働き手が米国企業などの業務に従事している。「円安で海外企業による人材需要が加速している」(中島隆行カントリーマネジャー)という。

海外の仕事に目を向ける日本人や日本人の働き手に目を向ける海外企業が増えている背景にあるのが、円安進行による外貨ベースでの給与に比べた日本人の給与の目減りだ。7~9月期の平均レートの1ドル=135円で試算した人材コンサルティング米マーサーの12月時点の各国給与データによると、日本で働く人の給与は若手社員で19年12月比11%減、マネジャー職で同5%減だった。一方で米国では若手・マネジャーともに16%増加しており、日本はタイなど新興国にも肉薄されている。

日本の生産年齢人口は1990年代をピークに減少に転じている。国連統計によれば2025年に20年比3%減少する見込みだ。企業の人手不足感は一段と強まっており、帝国データバンクによると人手不足を感じる企業は正社員で今年10月に51.1%とコロナ禍後で最大だった。少子高齢化で働き手が減る中、賃上げが進まなければ人材の海外流出が続き、人手不足が一段と加速しかねない状況だ。