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エミン・ユルマズ氏「2023年前半は相場大幅下落を警戒」 2023年の相場を占う(3)

米株バブルの調整はまだ不十分

2023年の株式相場は、少なくとも前半はかなり厳しい展開になるとみています。

世界景気は明らかに失速しつつありますが、それでもサプライチェーンの混乱によるインフレが十分に落ち着いていないので、米連邦準備理事会(FRB)など世界の中央銀行も、簡単には金融緩和に転換するわけにはいかず、景気失速への対策が打てません。

サプライチェーン混乱の一因が、中国の過剰なゼロコロナ政策。直近では、国民の激しい抗議行動を受けて行動制限を緩和していますが、中国国内での感染拡大もあり、今後も安心できるかは不透明です。

そして、米国株の下値余地は大きい。S&P500種株価指数は21年末の高値から25%の下落を記録しましたが、コロナ禍で膨らんだバブルの調整としては、この程度ではまだ不十分。直近ではエネルギー関連株が大きく上昇していますが、原油価格が下落トレンドにある中では違和感のある動きです。米国の不動産など、まだバブルが崩壊していない資産がある以上、大きなリスクオフ局面はもう一度来ると思った方がいいでしょう。

前半は買える資産が乏しい

本格的なリスクオフ相場が来れば、あらゆるリスク資産が同時に売られる展開になりやすく、率直に言って、持っていて安心な資産は極めて乏しい。ドルも売られ、遠からず1ドル=120円台まで円高が進むと見ています。

あえてこの時期に持てる資産といえば、まずは金。株価の暴落局面では金も下がるのですが、下落率は小さいはずです。また、米国の景気が失速すれば長期金利も下がるため、米国債の買い時かもしれません。為替が円高になっても、長期国債なら金利低下で債券価格が上昇し、短期間で利益を確定できる可能性があります。

もう一つは、割安過ぎる水準まで下げた日本の小型株。22年にほとんど下げなかった日経平均株価とは対照的に、東証マザーズ指数は十分に調整済みで、当面は小型株の方がリスクが低い。もちろん、赤字経営の小型グロース株などではなく、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などの指標で見て割安な銘柄に限ります。

地政学リスクから遠い国

23年後半のどこかで、相場の調整が十分に終わり、各国の中銀も利下げに転換するでしょう。そこまでの調整幅にもよりますが、その後はしばらく、リスク資産全般に強気になれる局面が始まる可能性があります。

その後の相場の主役となる資産は何でしょうか。まず、米国株が主役の一角であり続けるのは確かでしょう。米国の資本市場の優位性はそう簡単に覆るものではありません。しかし、21年までのような米国への一極集中は緩和され、新興国を含めた他の市場へも投資マネーが向かうはずです。

向かう先の一つは、「中国の代わりになれる西側陣営の国々」です。米中対立もあって中国への投資が避けられ、中国からの生産拠点の移転先として選ばれそうな国に、戦略的に投資が行われるでしょう。具体的にはインド、ベトナム、フィリピンなどです。特にインドは人口も伸び続けており、インフラがまだ足りないので投資の必要性が高いのです。日本も半導体工場の誘致に代表されるように、サプライチェーンの組み直しの恩恵を受ける企業が増えるでしょう。

あとは中南米、メキシコやブラジルにも注目が集まるかもしれません。中南米の強みは、今の世界では地政学リスクから遠い地域であること。メキシコは米国経済の恩恵を受けやすく、ブラジルは資源自給率の高さや産業の幅広さもあり、実は景気変動に強い国です。

(臼田正彦)