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世田谷代田にドラマ「silent」ロケ地効果 小田急が協力

ブームの火付け役はフジテレビ系の人気ドラマ「silent」。下北沢(同)にかけてのエリアがロケ地となり一気に注目が集まった。小田急電鉄が駅や電車などでの撮影に全面的に協力。周辺は同社が再開発を完了したばかりの新しい街並みが特徴で、ロケ地効果を生かし、地域への来訪や居住者の呼び込みを強化する。

ドラマは川口春奈さん演じる主人公が、目黒蓮さん演じる耳に難病を抱えた元恋人と再会し、共に乗り越えていく姿を描く。映像では鉄道施設や地下化工事で再開発した線路跡地が頻繁に登場。関係者がSNS(交流サイト)で世田谷代田での撮影を発信し、駅や撮影に使われた飲食店の注目が一気に高まった。

12月中旬、世田谷代田駅は急行などの通過駅にもかかわらず、カメラを持ったロケ地巡りとみられる人々でにぎわい、印象的な場面で使用されたという駅の看板の前でポーズをとる人も目立った。同駅を訪れる定期外乗降数は放映前の9月に比べて11月は23%増加し、本業の鉄道の利用向上にもつながった。

不動産情報サービスのLIFULL(ライフル)によると、ドラマ放映直後に同駅近くの物件の検索は1.2倍に増加した。

ライフルホームズ総研の中山登志朗チーフアナリストは、不動産市場への影響について「新宿にも渋谷にも近く便利な割に沿線住民くらいしか知らなかった街。知名度が上がったことはプラスだ。情に訴えるドラマになっていることも、ロケ地に行くきっかけとなっている」と指摘する。

世田谷区の保坂展人区長は、同地域が「地元の人にまちづくりの熱意がある」としたうえで、下北沢に近く落ち着いている良さがあるとして「(世田谷代田が)知られていくことは大変プラス」と評価する。

小田急にとって、ロケの誘致は新たな事業だ。4月にドラマやCMの撮影に有償で協力する「小田急ロケーションサービス」を開始。8月ごろにドラマ撮影の打診があり、9~12月、営業中の駅や電車で撮影を実施した。同社はロケ地の選定に加え、撮影に立ち会い乗客誘導なども担った。

小田急線の地下化に伴う再開発エリアが頻繁にロケで使用された(東京都世田谷区)

一方、世田谷代田は小田急にとっては戦略的な場所で、映像作品への登場はブランディングの絶好の機会だった。同駅、下北沢、東北沢の3駅にまたがる全長約1.7キロメートルの地域は線路の地下化でできた地上部分にテラスハウス、旅館、シェアオフィスなど13施設を整備し、5月に全面開業したばかり。落ち着いた外観の世田谷代田駅も17年に完成した新しい駅舎だ。

小田急は再開発について「積極的に提案できるまちとなり、ドラマにもマッチした空間になった。再開発後の姿をドラマで知った人も多い」(生活事業推進部の斉藤庸介氏)。同社は12月16日からドラマとコラボしたイベントを用意。ドラマの劇中音楽を世田谷代田駅で流すなどの取り組みも始め、年末に向け集客を一段と強化する。

一方、春先に向けて進学や就職など若年層らの移動で不動産市場が活発化する時期が近づく。1980年代、東急田園都市線の沿線が有名ドラマのロケ地になり「普通の住宅地だったのが、おしゃれでハイソな高級住宅地に変貌した」(中山氏)事例もある。

東京都内への人口流入は続くが、消費のけん引役となる若年層らの取り込みは地域の重要課題。「全国の若い人が視聴するドラマを通じて、少しでも住みたいと思うきっかけになれば」(小田急)と期待を寄せる。再開発施設での継続的なイベント実施や発信など、沿線の来訪や居住につながる取り組みが重要となる。