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海外REIT型ファンド、運用成績が悪化 投信観測所

11月末時点の投信分類別のリターンを比べると、海外REIT型の6カ月リターンはマイナス4.25%となり、国内債券型とともにマイナスの大きさが目立った。足元の3カ月リターンでも海外REIT型はマイナス6.35%とパフォーマンスの悪化が進んでいる(図表1)。

 

成績悪化の背景には、米国などの都市部で新型コロナウイルス禍による在宅勤務が続き、オフィス需要の回復が遅れていることや、欧米の長期金利上昇に伴う景気減速懸念が高まっていることなどがある。また、金利上昇は金融機関からの借り入れで資金調達するREITの向かい風にもなっているようだ。

海外REIT型で純資産総額(残高)が大きいファンドの運用成果はどうだったのか。国内公募の追加型株式投信(上場投資信託=ETF、DC専用、SMA・ラップ専用、通貨選択型を除く)のうち、残高が1000億円以上のファンド7本の成績をまとめた(図表2)。

7本のうち、残高トップ3および5位の4本は米国のREITに投資するファンドだ。残高が6923億円と最も大きいのは「ダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型) Bコース(為替ヘッジなし)」。6カ月リターンは、他のファンドと比べて相対的に底堅かったが、マイナス2.13%とマイナスリターンだった。1年リターンについては、円安・米ドル高が基準価格の押し上げ要因となったこともあり、2.01%とプラスを確保した。分配金利回りは13.74%と7本の中で最も高かった。

残る3本は世界各国のREITを中心に投資するファンドで、これらのうち残高トップは「ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)」だった。6カ月リターンはマイナス3.21%。1年リターンは2.93%と7本のうち最も高かった。一方、運用成績の悪化が目立つのが「ワールド・リート・オープン(毎月決算型)」。6カ月リターンはマイナス7.23%、1年リターンはマイナス3.80%と、7本のうち最もパフォーマンスが悪かった。

比較可能な10月末時点の国別組み入れ比率の上位を見ると、「ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)」は米国77.3%、日本9.6%、英国3.7%、「ワールド・リート・オープン(毎月決算型)」は米国72.5%、日本9.0%、オーストラリア4.8%と、ともに米国が7割超を占めている点は似通っている。一方、セクター別組み入れ比率の上位を見ると、前者はデータセンターなどの特化型21.5%、小売り18.7%、住宅18.1%に対し、後者は小売り22.3%、住宅17.7%、産業用施設16.8%と用途構成が異なる。両者のパフォーマンスはセクター要因や銘柄選択要因によって明暗が分かれたと考えられる。

分配金利回りに着目すると、米国のREITに投資するタイプは全て10%を超え、世界各国のREITに投資するタイプは全て10%を下回り、相対的に見劣りした。

世界的な景気後退への懸念が続くなか、保有資産に海外REITなどのリスク資産の占める割合が高い場合、相場回復を期待するより資産配分の見直しを検討する必要があるかもしれない。

(QUICK資産運用研究所 戸崎志賀)