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冬ボーナス9.7%増84万円 伸び最高、物価高で手厚く

日本経済新聞社は17日、2022年冬のボーナス調査(12月1日時点)をまとめた。1人あたり支給額(加重平均)は84万3059円で、過去最高の18年に次ぐ水準となった。前年比伸び率は9.7%増と過去最高で、2年連続のプラスだった。製品値上げが浸透した鉄鋼や需要が旺盛だった半導体関連などで最高益が相次いだうえ、物価高で生活を下支えする狙いもあり手厚く還元する動きが広がった。家計の負担増を補うにはなお不十分との見方もあり、消費の底上げにはベースアップを含む全方位の賃上げが課題になる。

 

上場企業を中心に21年と比較可能な511社の数字をまとめた。1975年の調査開始以来で伸び率は過去最高だった。支給額は好業績に沸いた18年(84万8736円)に次ぐ水準となった。集計企業数で全体の7割超を占める製造業は9.32%増の89万7267円だった。全産業の業種別の伸び率トップは鉄鋼で、77.75%増の99万7790円。製造業の18業種のうち繊維、食品を除く16業種で前年を上回った。電機や精密機械の2業種では平均支給額は100万円台に乗せた。

好調なボーナス支給の背景にあるのが好業績だ。全体の約4割が業績連動で、前提になる22年3月期は東証プライム市場に上場する3月期決算企業(金融除く全産業)の純利益が前の期比4割増の33兆円となり、過去最高だった。3社に1社程度(5月中旬時点)が最高益となった。23年3月期の純利益は前期比1割程度増え、過去最高益を更新する見込みだ。

ボーナスは原料高などを価格にいち早く転嫁できた鉄鋼などで大幅に伸びた。日本製鉄は2.3倍の118万5000円、JFEスチールも85.04%増の99万円。日鉄は高炉休止など構造改革も効き、12年の旧新日本製鉄と旧住友金属工業の経営統合後では22年3月期の純利益で最高益を確保。JFEホールディングスは最終損益が3期ぶりに黒字になった。

旺盛な需要が続いてきた半導体関連企業が支給額上位に並んだ。支給最高額はディスコで32.39%増の316万3228円だった。同社の支給額としても過去最高だった。過去最高の純利益を記録した22年3月期と22年4~9月の業績に連動して大きく増えた。足元では車載向け半導体製造装置などが好調という。7月に実施した正社員で平均2万円のベアも賞与の伸びにつながった。

一方、非製造業は航空や鉄道が新型コロナの打撃から回復し、11.01%増と3年ぶりのプラスに転じた。日本航空(JAL)は11倍の54万7400円、JR東日本は23.09%増の81万4400円だった。

三菱自動車が12月、一時金として最大10万円の「インフレ手当」を支給するなど、物価高で同様の支給が広がるなか、ボーナスを上積みして従業員の生活を下支えしようという動きが増えている。業績連動も含めて支給直前に全体の5割が賞与額を決めており、そうした企業の冬ボーナス伸び率は12.5%で、夏までに決定した企業の平均(6.93%)を5.57ポイント上回る。従業員の生活支援を色濃く反映している。高島屋は従業員の生活費を補塡する目的で101万6292円と10.28%増やした。

「賞与増額やインフレ手当を支給する企業が増える背景には人手不足への対応がある」(第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミスト)という。人材獲得競争が激しく、人の引き留め策としての狙いもにじむ。造船大手の名村造船所は47万300円と28.39%増やした。中国・韓国勢との競争や鋼材高が響き業績の本格回復が見通せないなか、従業員の意欲向上へ積み増した。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「賞与だけでは足元の物価高による世帯負担の吸収には不十分」と指摘する。一時金は多くが貯蓄に回り消費に向けられる分は4分の1以下とみられるためだ。物価高による2人以上世帯の生活費負担増は年約12万円とされる。22年ボーナスの増額分は夏冬合わせて約15万円だが、そのうち消費にまわる分は約4万円で、負担増を補いきれない。

木内氏は「企業は収益の先行きが不透明ななか、基本給底上げという長期にわたる負担増を嫌い一時金の増額でしのごうとしている側面もある」と指摘した上で「中長期的な賃上げ促進が消費拡大には不可欠」との見方を示した。