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三井住友銀行次期頭取 福留朗裕氏 金融危機、震源地で経験

裏表のないざっくばらんな話しぶりが人を引きつける。福留氏を知る関係者は「誰に対してもフランクで、部下の言うことによく耳を傾ける」と話す。「政治的な立ち回りもなく頭取になるとは」と驚く人もいる。

「日記を書いた方がいい。絶対同じ事が起こる」。2008年のリーマン・ショック対応の陣頭指揮をニューヨークでとった際、部下にそう指示した。脳裏にあったのはその約10年前、香港で向き合ったアジア通貨危機だ。突然の危機におろおろするばかりだった香港の苦い経験を糧に、リーマン・ショックでは深手を負う前に回避した。物おじせずひょうひょうとした雰囲気は、くぐり抜けた修羅場があるからこそだ。

「こんなにびっくりすることは二度とないだろう」。5年前に高島誠頭取からトヨタファイナンシャルサービスの社長就任を言い渡された際、そう思った。ところが同じ高島氏から頭取の指名を受け「デジャブ(既視感)だった」

トヨタ時代は40カ国の拠点を巡った。今も「現地・現物」の考え方を大切にする。「実際に体を使って愚直に繰り返すことで『会社をこうしたい』というアイデアも思いつく」

大学では体育会アイスホッケー部に所属。後輩であるみずほフィナンシャルグループの木原正裕社長とは1年間一緒にプレーした仲だ。ニューヨークなど赴任地でも現地のチームでプレーし、40代後半まで現役だった。

1月1日が誕生日で還暦に。特別な年始めとなる。

 

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