政府は復興所得税の期限を2037年から14年間延長する案をまとめた。この歳入の一部を防衛財源に振り向ける。週内にまとめる与党税制改正大綱に具体的な税率や実施時期を明記できるかが焦点となる。
政府は今後5年間の防衛費を43兆円程度とする方針だ。うち40.5兆円を毎年度の当初予算で手当てする。22年度当初の5.2兆円の5年分(25.9兆円)から14.6兆円程度の上積みとなる。
歳出改革や決算剰余金の活用、税外収入などをためておく「防衛力強化資金(仮称)」で計11.1兆円を確保する。残り3.5兆円程度は増税で確保する必要がある。27年度単年でみると防衛費は現状から4兆円ほど増える。このうち1兆円強を増税でまかなう。
自民税調が14日に示した素案で法人税、復興特別所得税、たばこ税で1兆円強を確保すると盛り込んだ。24年度以降に段階的に増税する方針。法人税で7000億~8000億円、復興所得税とたばこ税で約2000億円ずつ集める案がある。
宮沢洋一税調会長は会合後、記者団に「役員から賛成を得た」と話した。具体的な税率や実施時期は決まっていない。
法人税は本来の税率を変えず特例措置を上乗せする「付加税」方式をとる。湾岸戦争の多国籍軍支援や震災復興の財源確保でこの手法を使った。素案には「所得1000万円相当の税額控除を設ける」と明記した。中小企業の9割は増税の対象から外れる見通しだ。
復興所得税は37年までの25年間の期限を延長しつつ歳入の一部を防衛財源に振り向ける。宮沢氏は振り向け分について「当分の間、防衛費のための特別な目的税にする」と説明した。復興所得税は所得税額に2.1%をかけている。22年度に4624億円の税収を見込んでおり2000億円なら1%程度に相当する。
政府がまとめた14年間の延長案を今後議論する。税率は据え置き、個人の負担感が増えないようにする。1年当たりの負担は変わらないが、実施期間が長期化するで実質的には増税となる。
素案はたばこ税の活用で「国産葉たばこ農家への影響に十分配慮する」と言及した。党内にはたばこ増税に反対する声があり、段階的に増税する。大震災の際にも増税を検討したが農家の反発で見送った経緯がある。
政府はこうした増税案とは別に、自衛隊の施設整備に向けて建設国債の発行も検討する。財務省は自衛隊施設は有事に損壊する恐れがある「消耗品」とみて建設国債の適用を認めてこなかった。与党内で発行を認めるべきだとの声が出ていた。
政府や自民党内では増税を掲げる岸田文雄首相に対する反発が続く。閣内では高市早苗経済安全保障相や西村康稔経済産業相が、賃上げへの影響などを念頭に反論や慎重姿勢を示す。自民党内でも安倍派を中心に増税自体に反対する声がある。
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