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新興国株、来年どう投資すべき 中国政府重視の電池注目、ブラジルの金融緩和余地も

長い調整局面が続いた新興国株はドル高の一服などで底入れの兆しが出てきた。2023年はどう投資すべきか。シンガポールのイーストスプリング・インベストメンツの最高投資責任者(CIO)は「中国の電池や半導体など、対欧米の戦略として中国政府が重視している分野が有望」と指摘。英シュローダーの運用部門の新興国株担当は「金融緩和の余地が出てきたブラジル株に注目している」という。

ビル・マルドナド氏 イーストスプリング・インベストメンツCIO

――23年の新興国株投資を推奨していますね。なぜですか。

「22年までの世界の投資環境はインフレなどで非常に不安定だった。ただ、米利上げは終わりが見え、(新興国株に重荷となる)ドル高も既にピークに達した。高いリターンを求めて新興国に資金が向かうだろう」

――新興国株の最大の焦点は中国です。どう評価していますか。

「政府が戦略的に育てようとする分野だ。政府はバッテリー技術で世界を席巻することを狙っている。技術力も高い。欧米との対抗上、半導体技術も重要となる。こうした継続的な政府の資金投入が見込まれる分野に注目する」

「銀行株も有望だ。中国企業は多くの場合、銀行を通じて資金を調達する。経済再開に伴い資金調達の需要は増えるはずだ。中国の銀行のPBR(株価純資産倍率)は現在極めて低く、株価の上昇余地は大きい」

――ただ、習近平(シー・ジンピン)指導部の強権化による市場へのリスクは高まっています。

「巨大IT企業への突然の規制強化は海外投資家にとって極めてネガティブとなった。ただ、中国当局が問題視する個人情報などビッグデータの民間企業による独占・管理に対しては、日米欧でも厳しい規制を導入している。中国の規制導入は理解できる」

――中国以外の新興国投資をどうみていますか。

「アジアの新興国が世界で最も有望だ。1990年代後半のアジア通貨危機は、過度な外貨建ての借り入れが引き起こした。その教訓からアジア諸国の財政状況は良好だ。国民総所得(GNI)に対する外貨建て債務の割合を注視している。2割超で危険水域とされる中、ベトナムやインドは5%未満にすぎない」

(聞き手は今堀祥和)

トム・ウィルソン氏 シュローダー エマージング株式運用チームヘッド

――ドル高に一服感が出ています。新興国株式にとって追い風でしょうか。

「新興国株式全体の値動きを表す指数と、(他通貨に対する米ドルの強さを表す)『ドル指数』を比較すると、両者の逆相関はとても強いことが分かる。今後、新興国株の上昇が期待できる」

――注目している国はどこですか。

「ブラジル株だ。理由は金融緩和の余地が出てきたからだ。政策金利は14%弱ある一方で、インフレ率は顕著に低下している。実質金利は大きなプラス圏と十分な引き締め環境にある。金融引き締めから緩和に向かうサイクルが新興国で最も進んでいる。中銀は遠くないうちに金融緩和を開始できるだろう」

「ギリシャ株も有望だ。政府が官僚主義や役所業務の改善、税負担の軽減など様々な改革を成功させている。不良債権の処理も進んだ。新興国で最も改革に前向きな国と捉えている。欧州連合(EU)による南欧諸国への復興基金の恩恵もある。両国とも投資評価は『強気』としている」

――中国をはじめ、アジア株は上昇しています。どう評価しますか。

「台湾株は『弱気』から『中立』に引き上げた。ハイテク産業は需要減による在庫増が懸念だったが、十分に株価に織り込まれた。もともと台湾のハイテク産業は成長力が高い。徐々に買いを入れている」

「ただ、中国は現段階(11月時点)で『弱気』としている。ゼロコロナ政策で個人消費や不動産市場に圧力がかかっているとみている」

「このところ株価上昇の目立つインドは割高感がある。インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイなども同様で、いずれも『弱気』としている。理由は簡単で、他の新興国株のほうが割安で魅力的なためだ」

(聞き手は小池颯)