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W杯支える中国マネー、広告1900億円 ハイセンスやワンダ、米超え首位

国有家電大手の海信集団(ハイセンス)や不動産大手の大連万達集団(ワンダ・グループ)など、中国企業が広告などで同大会に投じた資金は14億ドル(約1900億円)近くに上る。米国を超えて世界トップで、中国マネーが大会を支える。

 

「中国第一 世界第二」。世界の一流選手が戦うピッチのわきで、こんな漢字表記の広告が躍った。ハイセンスが手掛けた文句で、テレビ出荷台数シェアで中国1位と世界2位をアピールしたとされる。

しかし、この文句はしばらくしてとりやめることになった。シェアなどを巡って異論が出たことが原因で、同社は「中国製造 一起努力(ともに努力しよう)」という文句を中心に広告をアピールする方針に変更した。

ハイセンスだけでなく、今回のW杯は中国企業のスポンサーが多い。最も多くの資金を投じたとみられるのがワンダ・グループだ。中国メディアによると、2016年に国際サッカー連盟(FIFA)と15年間のスポンサー契約を結んだ。

同社は15年にスペインの名門クラブ、アトレチコ・マドリードの株式の20%を取得するなどサッカーや海外事業を拡大。W杯の活用に動いた。その後、巨額の負債が経営を圧迫し、18年に同クラブの保有株式を売却するなど事業整理を進める。今回はスキーリゾートなどを手掛ける「万達文旅」をアピールする。

ワンダの次のランクがW杯スポンサーで、ハイセンスのほか乳業大手の中国蒙牛乳業、スマートフォン大手のvivoの計3社が続く。3番目のランクが地域を限定したスポンサーで、求人アプリ大手の「BOSS直聘」と電動バイク大手の雅迪科技集団が並ぶ。

今回のW杯の中国のスポンサー企業は6社。前回のロシア大会に比べ1社減ったが、海外調査会社のデータを利用した中国メディアによると、中国企業がカタール大会に投入した資金は13億9500万ドル。米国企業の11億ドルを上回った。

なぜ中国企業がW杯に積極的なのか。世界が注目するW杯を活用することで海外事業の拡大を促すことが主眼とされる。ただ、中国語の宣伝文句を打ち出している背景には「世界ブランドであることを中国市場でアピールする狙いもある」(外資系広告会社幹部)。

実際、ロシア大会の視聴者数を分析した報道によると、中国は6億5570万人で国別で1位だった。今回の大会でも観戦する消費者は多く、外食大手は出前サイトで観戦にあわせたセットなどを拡販する。

W杯の本大会に中国チームは参加していないが、中国でのサッカー人気は高い。テレビ観戦で観客がマスクを着用していないことを知って、中国の新型コロナウイルス感染対策への疑問が生まれた経緯があり、W杯は「ゼロコロナ」緩和を導く役割も果たしたといえそうだ。

(北京=多部田俊輔)