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「住みたい街」3位に翔んだ大宮 魅力を住人が詳説

大宮駅があるさいたま市は21年、人口流入数が全国トップ。全20の政令指定都市で世帯可処分所得、教養・娯楽への支出がトップなど、消費パワーに勢いがある。長年の居住者である通販コンサルタントの村山らむね氏が、大宮ライフの魅力を語りつくす。

 

大宮居住歴47年(プラス浦和と杉並に数年ずつ)になる私。SUUMO「住みたい街ランキング」で大宮が3位にランクインというニュースには驚いた。他社の同種の調査でも上位に定着しつつあり、確実に人気は上昇しているようだ。実際、さいたま市の人口は毎年1万人前後の転入超過で着実に増え続け、現在133万人を超えている。 

さいたま市の人口は着実に増加(出所:さいたま市の住民基本台帳から各年の10月1日時点の人口を抽出)

大宮とよく比較される浦和は、文化的な雰囲気や教育水準の高さから、「憧れる街」「わざわざ選ぶ街」であるのに対して、大宮は良くも悪くも「住める街」「気づいたら選んでいた街」だ。賃貸にしても購入するにしても、予算内で収めることのできる現実的な街ではないだろうか。そんな大宮ライフの魅力を語ることで、マーケター諸氏には商機を感じ取っていただきたい。本稿ではさいたま市の上半分に当たる旧大宮市エリア(大宮区、見沼区、北区、西区)を中心に取り上げる。 

鉄道の街、駅ナカがすごい

大宮エリアは、武蔵一宮氷川神社の門前町として、また市内を縦断する中山道(国道17号)の宿場町として栄え、近現代は鉄道を軸に発展した街である。リクルートの不動産情報サイト「SUUMO」の「住みたい街」も人気駅ランキングであり、大宮駅そのものが評価されている面が大きいだろう。22年で開業40周年を迎えた東北・上越新幹線の開業当時の始発駅は大宮だった。その新幹線高架脇を走る埼玉新都市交通「ニューシャトル」に乗って1駅目は、鉄道博物館駅。東京・神田にあった交通博物館が閉館、移転オープンして早15年がたつ。子供連れで鉄道博物館を訪れたことをきっかけにこの地に引っ越してきた世帯もいるはずだ。 

かつて栄えた東口を逆転して久しい大宮駅西口

大宮駅はJR東日本エリアの駅として乗車人員7位。20年に新橋駅を抜いて8位からランクアップした。地下の埼京線(川越線)川越方面ホームは21・22番線という一大ターミナル駅だ。乗り入れている路線、発着本数が多いだけでなく、駅ナカ商業施設の充実も目を見張るものがある。

JR東日本の駅ナカブランド「ecute(エキュート)」は、05年オープンの「エキュート大宮」が1号店だった。ホームからエスカレーター・階段を上がったところに、総菜、スイーツ、文房具に眼鏡、生花からレストランまでがそろい、改札を出る前にかなりの買い物がここで済んでしまう。20年7月には中央改札北側に「エキュート大宮ノース」がオープンし、駅ナカ商店街がさらに充実した。改札を出たところには、駅直結のショッピングセンター「ルミネ」の入り口があり、若い女性客が吸い込まれていく。大宮駅は移動の起点だけでなく、「買う」「過ごす」などさまざまな機能を持つ魅力的な空間になっている。

昭和を脱却途上の東口エリア、令和に輝く西口エリア

大宮駅の外に出てみよう。東口と西口ではだいぶ表情が違う。もともとは初詣の人出が全国トップ10に入る氷川神社のある東口が栄えていた。だが再開発が滞り、新幹線開通に向けて整備が進んだ西口のほうが現在は発展している。

東口南側のリトル歌舞伎町ともいえる「南銀」(なんぎん)、駅前から延びるアーケード街「すずらん通り」は、居酒屋が軒を連ね、昭和の香りを残す。そんな東口にも遅ればせながら新しいスポットが登場し、再開発も進行中だ。

よしもと劇場が大宮にあることは、地元住民とお笑いファン以外にはあまり知られていないかもしれない。

東口駅近くの再開発プロジェクト「大宮門街(かどまち)」がオープン(出所:運営元の中央デパートのプレスリリース)

その大宮市民会館のバトンを受けた市民ホールが「レイボックホール」。地元百貨店(大宮中央デパート)の跡地に、オフィスや商業施設とともに建設され、22年4月に「大宮門街(かどまち)」としてオープンした。レストラン街や食品スーパー「ザ・ガーデン自由が丘」は集客力があるものの、1階にまだ空きテナントがある状態。地元民としては気をもんでいる。

氷川参道ゾーンにZ世代が集う

東口は、駅前から少し離れたエリアに見どころが多い。例えば中山道と氷川参道を斜めにつなぐ一の宮通り。周辺にはヘアサロンが目立つ。都内の一流ヘアサロンから独立した美容師が、腕試しで開業先に選ぶのが大宮なのだという。おしゃれなカフェだと思って入るとヘアサロンだったというのは「大宮あるある」だ。ヘアサロンのほか古着店もひしめき合い、「美容室通り」とも呼ばれるこのエリアには「大宮Z世代」が日々行き来している。 

旧図書館をコミュニティースペースにリノベーション(出所:旧大宮図書館をリノベしたコミュニティースペース「Bibli」に入居する「SAITAMA出会いサポートセンター」のリリース)

氷川参道ゾーンにも新しいスポットが続々誕生している。旧大宮図書館をリノベーションして21年12月にオープンした「Bibli(ビブリ)」は、青果マルシェやカフェ、キッチンカー、起業相談コーナーなど、コミュニティースペースとして生まれ変わった。19年に移転・新築された大宮区役所も氷川参道沿いにある。区役所2、3階を占める大宮図書館は、大きな吹き抜け部分からケヤキ並木を臨む、隠れた人気スポットだ。

実は日本一長い参道である氷川参道。スタート地点はさいたま新都心駅が最寄りで、そこから2キロメートルのケヤキ並木が続く。この参道沿いに近年、カフェやレストランがぽつぽつオープンして人気になっている。テレビの大宮特集でよく登場するうどん店「駕籠休み」もこのエリアの店舗だ。氷川神社のそばには、さいたま市初のクラフトビール醸造所「氷川ブリュワリー」があり、市内で栽培したホップや小麦を使用しての醸造に成功している。併設のパブもこのエリアの人気スポットだ。氷川参道は成熟した日常空間として地元の老若男女に愛されている。

ますます発展する西口エリア

一方の西口は、一言で言うと「整っている」。ルミネ2、マルイ、ビックカメラなどの商業施設に活気があり、パレスホテル、ソニックシティ、鐘塚公園などでイベントがめじろ押しだ。特にソニックシティの北側で進む、27年完成予定の桜木町2丁目再開発プロジェクト(大宮駅西口第3-A・D地区第一種市街地再開発事業)は、敷地を斜めに通り抜ける商店街「まちなかガレリア」や、イベントを開催できる緑化空間「まちなかプレイス」など、魅力的な計画が示されている。

西口の桜木町2丁目再開発プロジェクトは27年完成予定(出所:プロジェクトを主導する東京建物のプレスリリース)

唯一の不安点が、セブン&アイ・ホールディングスが売却を決めたそごう・西武。西口のペデストリアンデッキに直結しているそごう大宮店は、22年11月17日に食品フロアをリニューアルオープンしたばかりなだけに気がかりだ。東口の大宮ラクーンよしもと劇場が入るビルも、さかのぼると西武百貨店だった。どうなるにせよ、大宮に新しい生活や文化をもたらすものになることを願いたい。

「お財布ファースト」な買い物が完結

日常生活に必要なものは大宮エリアの買い物でほぼ片付く。かつて島忠家具センターの屋号で営業していた地元の家具店、島忠がニトリホールディングスに買収され、その融合店である「ニトリホームズ」の1号店が21年6月に北区にオープンしたほか、ロードサイドの大型店出店で成長してきた鮮魚チェーン「角上魚類」は、ここ大宮でも国道16号と17号が合流・交差する地点にある。このほか、本社が埼玉県内の食品スーパー「ヤオコー」「ベルク」、本社を21年1月に北区から大宮区に移したファッションセンター「しまむら」も地元企業だ。大宮エリアを車で周遊すると、家計にやさしい「お財布ファースト」、かつ良質な品ぞろえの店舗がそろっていることを改めて実感する。みえを張らずに良いものをお値打ち価格で購入できる買い物環境の良さは大宮の魅力だ。

もちろん、都心にショッピングに出る場合も、そこは「鉄道の街」。大宮駅は始発便が多く座って行けるため、体感距離は短く感じられる。通勤・通学者にもありがたい。

全区に畑がある、都会と田舎のいいとこ取り

16号線はいわば都会と田舎の境界線上。ゆえに大宮はまだまだ田舎が残っている。大宮駅から1~2駅乗ると、ビルや住宅しか見えなかった車窓からいきなりのどかな田園風景が飛び込んでくる。実はさいたま市には浦和エリアまで含めて全10区に農地がある。住宅密集地の大宮区堀の内にある貸農園「シェア畑」は、若いファミリーに人気だ。さいたま市内の若手農家が欧州の野菜を栽培してレストラン向けに流通させる「さいたまヨーロッパ野菜研究会」(ヨロ研、事務局はさいたま市中央区)なるプロジェクトも13年に発足。ユニークな地産地消の取り組みに他市・他県からの視察が絶えない。

東側の見沼区には、農地はもちろん、手つかずの自然が残っている。梨や栗などの観光果樹園があり、周辺にはグルメスポットも多い。介護施設やデイケアセンターなど介護系の施設が目立ち、老後の安心も担保している。北区には知る人ぞ知る「さいたま市大宮盆栽美術館」があり、休日をゆったりと過ごすにはぴったりだ。盆栽園が多いその名も盆栽町エリアは結構なお屋敷が立ち並ぶ。西区には、約10.3ヘクタールの面積を持つ三橋総合公園があり、旧大宮市エリア唯一の公営プールがある。そこから17号を北上したところにある「さいたま清河寺温泉」は、竹林を臨む落ち着いたスパスポットでのんびりできる。大宮花の丘農林公苑は、季節ごとに咲く花が美しい。

大宮駅から都心に通勤・通学する平日と、市内の見どころを車で回る週末――。都会と田舎の両面を持つ大宮ライフの魅力だ。道路は、上尾市との市境近くを走る国道16号を西へ向かうと川越市で関越自動車道に、東へ向かうと岩槻区で東北自動車道に接続。さいたま市内を南北に走る国道17号を北上して16号を越えると、桶川市で圏央道(首都圏中央連絡自動車道)に、さいたま市の南端で外環道(東京外郭環状道路)に接続する。四方を高速道路に囲まれた立地を生かし、高速バスのバスターミナル「バスタ大宮」を設置する構想も持ち上がっている。市内は慢性的に渋滞するエリアを抱えていて、その解決は一足飛びにはいかないが、鉄道のみならず、道路においてもターミナルを目指す方向だ。

可処分所得、教養・娯楽支出額の高さは魅力

0~14歳の転入超過も全国トップ(出所:データから見るさいたま市)

新型コロナウイルス禍の21年、さいたま市は人口流入数が全国トップだった。宅地、マンション開発が盛んで、一時は統廃合が心配された大宮駅近くの大宮小学校は今ではクラスが増設されている。人口流入は今後も続くだろう。マンションは続々と着工しているが、行政は待機児童ゼロ(22年4月時点)を達成。中学3年生の英語力調査でさいたま市が3年連続全国トップになるなど、教育環境も良い。

さいたま市の可処分所得の高さ、消費意欲の高さに注目〔出所:「全47都道府県幸福度ランキング」2022年版(一般財団法人日本総合研究所)〕

19年公開映画「翔んで埼玉」は市内でもヒットし、映画館は週末混み合った(さいたま新都心駅直結のショッピングモール「コクーンシティ」内の映画館「MOVIXさいたま」は大宮区にある)。埼玉県民をダサいとディスる内容ではあるが、「ダサくていいじゃん」と自虐ではなく、笑い飛ばせる余裕がある。実際のところ、さいたま市の可処分所得や教養・娯楽への支出額は、政令指定都市の中でトップクラスだ。他者評価を気にせず、自己充足に重きを置く、背伸びをしない価値観がこの街を包み込んでいる。

以上、多分に地元愛を含んでいるが、大宮ライフの一端をイメージしていただけただろうか。「修業」を終えた若手美容師が大宮で開業するように、小売企業ももっと大宮エリアに出店して腕試しをしてみてほしい。 

(通販コンサルタント 村山らむね)