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不動産株覆う「23年問題」 ビル過剰供給など懸念

ひとつは東京都心で控えるオフィスビルの大量供給。もうひとつが、日本の不動産の割安感に注目してきた海外投資家が景気後退リスクと自国の金利上昇を背景に日本での不動産買いに慎重になるとの観測だ。二重の懸念が株価の重荷となっている。

9日の日経平均株価の終値は前日比326円(1.2%)高の2万7901円だった。株価が持ち直しの動きを強めるなかで、出遅れているのが大手不動産株だ。9日は三井不動産が0.6%高の2627円、三菱地所が0.7%高の1852円50銭にとどまった。

6月末と比べた騰落率も三井不が10%安、菱地所が5.9%安とともに日経平均(5.7%高)を下回る。両社は23年3月期の純利益が最高となる見通しだが、好業績が材料視されず逆行安となっている。

買われない背景には、23年に向けての懸念が高まっていることがあるようだ。理由のひとつがオフィス市況の先行きに対する不安だ。モルガン・スタンレーMUFG証券の竹村淳郎アナリストは「23年夏ごろにかけては東京都心で大型物件の竣工が重なることから、年前半はオフィス市況の悪化リスクが意識されやすい」と指摘する。

大量供給を控える一方で、在宅勤務の定着もあって、新型コロナウイルス禍で落ち込んだオフィス需要は回復していない。三鬼商事(東京・中央)がまとめた11月の東京都心のオフィスビルの平均空室率は6.38%と、供給過剰の目安とされる5%を22カ月連続で上回った。

ニッセイ基礎研究所の吉田資主任研究員は「IT(情報技術)企業などではオフィスを減らす傾向にあり、市況全体に下押し圧力がかかっている」とする。米IT大手の人員削減の影響を指摘する声もある。「GAFAの一角が日本法人の移転計画を白紙に戻した」(不動産市場関係者)といった観測も飛び交う。大手ビルは相対的に堅調ともみられるが、市況全体が一段と下がれば事業環境の悪化リスクは高まる。

もうひとつの理由は、足元で日本の不動産市場を支えている海外マネーが、日本から離れることのリスクが浮上していることだ。

不動産サービス大手のシービーアールイー(CBRE、東京・千代田)によると1~9月の事業用不動産の投資額は2兆3470億円と、前年同期に比べて12%減った。一方で、投資主体別にみると海外投資家は同3割増えた。円安と相対的な低金利を受け、日本の不動産を割安とみる海外勢は国内市場を支える。

その潮目が変わってきた可能性がある。現在進行中の大型案件の入札では「一部の海外投資家が慎重姿勢に転じた」(CBRE)。米欧では景気後退への懸念が日に日に強まっている。海外投資家がリスクを回避して資金を引き揚げる動きが広がれば、「外国人頼み」の不動産市場は大きな打撃を受けかねない。

大手不動産株はもともと今年前半にかけて、業績が底堅い内需株として「グロース株が買いづらいなかで消去法的に買われていた」(三菱UFJ国際投信の末永壮視シニアファンドマネジャー)との指摘もある。ここに先行き懸念も加われば、積極的に買われる展開はさらに遠のく可能性がある。

(斎藤正弘)