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紛失防止スマートタグ、ストーカー悪用 無断で位置把握

遠方からでもスマートフォンでタグの位置情報を把握できる機能を使い、無断で相手の車に取り付ける手口が判明。メーカー側の不正対策を無効にする改造も確認された。専門家は「警察は実態把握を急ぎ、対応を検討すべきだ」と指摘する。

「どこでどんなことをしていたか知りたかった」。同僚女性につきまとったなどとして、京都府警が12月1日にストーカー規制法違反容疑で書類送検した40代の男性会社員はこう供述した。

男性が悪用したとされるのがスマートタグだ。直径約3.2センチの大きさで、車のバンパーにテープで取り付けられているのが見つかり、女性が府警に相談した。スマートタグには紛失や忘れ物を防ぐため位置情報を調べられる機能がある。府警は男性が位置情報をもとに女性の行動を把握していたとみている。

スマートタグの位置情報の把握には近距離無線通信「ブルートゥース」が使われる。iPhone(アイフォーン)やタグと連動するアプリを入れたスマホを持つ人が近づくとタグが通信する仕組みだ。この通信が位置情報として把握され、持ち主はスマホなどを使って確認することができる。

メーカー側は悪用防止対策も講じている。スマートタグを取り付けられた相手らが気付くように持ち主と一定の距離が離れると音が鳴る機能だ。だが、この機能を無効にする不正も確認された。

千葉県警は11月下旬、スマートタグを音が鳴らないように不正改造して販売したとして、40代の会社員の男を商標法違反容疑で逮捕した。男はオークションサイトに出品し、「無音化しました」などと宣言し、約60個販売したとみられる。元交際相手の車に無断で取り付けていた購入者もいたという。

一方で、メーカー側は別の対抗策も用意。付近にあるタグを検出するアプリの利用を推奨し、タグまでの距離と方向を確認する機能なども開発する。

位置情報を巡ってスマートタグが悪用された背景には、ストーカー規制法の規制対象と明示されていないブルートゥースを使うことで法の網の目をかいくぐる狙いがあるとの見方も出ている。

2021年の同法改正では、無断で全地球測位システム(GPS)を取り付けたり、位置情報を取得したりする行為が新たに禁止された。21年の警察へのストーカーの被害相談のうち、GPS機器の無断取り付けや位置情報の取得は延べ152件。実際に取り締まりも始まっており、警察が禁止命令を出したのは6件で、検挙も5件あった。

東京都立大学の星周一郎教授(刑法)は「位置情報が他人に無断で特定される不安は深刻で、その意味ではGPSもブルートゥースも差はない。警察は相談対応や事件の摘発を通じ、スマートタグの悪用実態の把握を急ぐ必要がある」と指摘する。

その上で、未然に被害を防ぐことが肝要だとして「ストーカー規制は新たな手口が登場するたび見直しが繰り返されてきた。必要に応じて関係法令に明記して抑止力を働かせるなど、対応を検討していくべきだ」と話している。

(森賀遼太)