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マクドナルド、未完の積極投資 「勝ち組」の死角 片山志乃

新型コロナウイルス下でも増収増益を続け外食業界の勝ち組だったが、2022年12月期は期初の営業最高益予想が一転して減益となる見通し。持ち帰りや宅配など変化した需要に対応するための積極投資の成果が見えにくく、資産効率も低下している。

「客足は衰えておらず、一見晴れて見えるが収益性は土砂降り」。日色保社長兼最高経営責任者(CEO)は危機感をあらわにする。

既存店売上高は20年7月から29カ月連続で前年同月比プラスが続く。それでも11月には22年12月期の下方修正に追い込まれた。連結売上高は前期比10%増の3500億円を見込むが、1%増の350億円を見込んでいた営業利益は3%減の335億円に引き下げた。

主因は円安と原材料高だ。食材や包装材などの調達コストは上がっている。輸入食材は為替ヘッジもしているが、補いきれない部分もでている。9月末にはハンバーガーを130円から150円にするなど、今年2回目の値上げに踏み切ったが吸収しきれない。

マクドナルドは郊外のドライブスルーや持ち帰りなどコロナ下で変化した需要に対応するため積極投資を続けてきた。

新型コロナ前の19年12月期に191億円だった設備投資額は、21年12月期は約6割増え297億円に、22年12月期も約300億円を投じる計画だ。

ハンバーガーなどの製造能力を約2倍にしたキッチン設備の導入や、ドライブスルーのレーンを2倍にするなど、増加する注文に対応するよう店舗の増強を進めている。また22年度のIT投資等の予定額は70億円と店舗建設の80億円に肉薄する水準で、スマートフォンで事前に注文や決済ができるモバイルオーダーや宅配を強化してきた。

積極投資で資産は膨らんでいる。店舗などの有形固定資産に加え、ソフトウェア関連資産といった無形固定資産も増え、21年12月期の総資産は2601億円と17年12月期比で3割以上増加した。

ただ効率は上がっていない。QUICK・ファクトセットで会社の資産を使ってどれだけ効率良く稼いだかを示す総資産利益率(ROA)をみると、21年12月期には9.7%と17年12月期の12.8%から3.1ポイント低下している。

ROAは総資産回転率と売上高純利益率に分解できる。売上高純利益率は17年12月期の9.5%から7.5%に低下、売上高を総資産で割った総資産回転率も1.35回から1.29回に低下した。フランチャイズチェーン(FC)を含む全店売上高を期末店舗数で割った1店舗当たりの月商は約1800万円と、17年12月期から400万円増えている。ただ積極投資に応じて一段と売上高を伸ばすことが求められる。

原材料高を受けてさらなる値上げも検討するが、22年12月期の純利益率は5.7%と一段の低下が避けられない。まずは総資産回転率の改善が急務だ。 

コロナ前はマニュアル化された店舗運営の中でレジ前の行列を見て商品作りの体制を決めていた。だがモバイルオーダーや宅配などが増えたことで、行列から注文の多寡の判別が難しくなり、店舗運営の難易度が上がっている。

キッチンの製造能力が上がっても、今度は商品の受け渡しが円滑にいかないといった課題もでている。コロナ下で増えた巣ごもり需要を取り込むために積極的に投資したモバイルオーダーが、店舗の運営効率を圧迫し想定したほどの販売増につながっていない可能性がある。 「郊外型店舗ではドライブスルーの増強により5~10年で売り上げを1.5倍にできる」(いちよし経済研究所の鮫島誠一郎氏)との見方もあり、改善の余地はある。

マクドナルドの大株主である米マクドナルドは段階的に株式を売却してきた。22年6月時点の持ち株比率は35.3%と20年6月比で14.7ポイント減少した。代わりに増えたのが個人株主で、食事券がもらえる優待狙いもあり48%まで増えた。

前期末の手元資金は502億円と豊富だ。投資効果が見合わなければ還元圧力が強まることも想定される。積極投資を実らせることが、勝ち組の座を維持する条件となる。