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金利大変動時代へ 「永久国債」は秘策か愚策か

歳出総額約29兆円の2022年度第2次補正予算が2日、成立した。財政拡張圧力は強まる一方だが、世界的なインフレで金利急騰の火種も膨らんでいる。歳出の約8割を国債発行で賄うが、増税を含めタブーなき財源議論を先送りしたままだと300年に1度といわれる9月の英国の金利急騰「トラス・ショック」以上の惨事が起きかねない。金利大変動時代に備え、政府・日銀の「帳簿」の見直しは急務だ。

日銀の長短金利操作の影響を受けにくい20年物国債の利回り上昇が止まらず、前年比の変化率が100%を超える例が増えている。金利の絶対水準が低い面はあるが、1947年の財政法施行以降、初の出来事だ。超長期債の高ボラティリティー(変動率)化は利上げなど近い将来の金融環境の激変を示唆している可能性がある。

中央銀行にとって利上げは準備預金に支払う金利を増やし、資産として保有する国債の価格を下げるなど金利収支や資産負債バランスの悪化に直結する。日銀の保有国債の含み損はその前兆だ。

中銀の財務悪化が政治的に問題視されれば、通貨や国債の信用に影響し、財政の持続性は危うくなる。国民民主党は日銀保有国債の一部を償還期限のない永久国債化するよう提案している。

永久国債は英国がナポレオン戦争の債務整理に利用したことから「コンソル債」とも呼ばれる。著名投資家のジョージ・ソロス氏はトラス・ショック後、英フィナンシャル・タイムズ(FT)への寄稿で「償還期限のない永久国債は今回のような深刻な金融危機を解決するための理想的な手段」と持ち上げた。

その重要な論点は財政と金融・年金は表裏一体という点だ。不用意な金利急騰(国債価格の急落)は財政や金融システム、年金制度を同時に危機へと追い込む。日銀の国債保有比率が発行残高1050兆円の5割を超えた点に注目は集まるが、残りの大半はなお金融機関や保険会社、年金基金の手中にある。日銀が量的・質的金融緩和の「出口」を間違えれば、民間に重大なリスクが発生する。

保有する国債の大半は、市場金利が上がると価格は下がる固定利付債だからだ。解決する秘策はないか。岩村充・早大名誉教授は5年前に日銀の保有国債を「政府による償還権と変動金利付きの永久国債」に入れ替えるプランを発表した。

利点について岩村氏は「政府は金利変動リスクを負う代わりに借り換えリスクを減らすことができる」と説く。変動金利なので値下がりしにくく受け入れた日銀は金融政策の正常化の際、損失を気にすることなく国債を市場で売却できる。その結果、民間ポートフォリオの変動金利化も進み、金利ショックに対する金融システムの耐久性が上がる。市場には「投資家側に償還請求権が付与されれば変動利付き永久債は大きな需要が見込める」との声もある。

10月の「新しい資本主義実現会議」では、日銀保有の上場投資信託(ETF)の出口論を巡り政府設立の特別基金が発行する変動利付き永久債を日銀が引き受け、代わりに基金はETFを現物株に換えて永久保有する案がメンバーの渋沢健氏から提言された。発案した東京海上アセットマネジメントの平山賢一氏は「日銀からリスク資産を分離することで通貨の信認低下を回避し、エンゲージメント(企業と株主の対話)の質も高まる」と話す。

永久国債の発行には「60年償還ルール」を担保する特別会計法や「償還計画」を求めた財政法をクリアする必要がある。財政規律をゆがめかねない愚策という意見もある。だが、建前論で議論を空転させるような余裕はもはや日本にはなくなっているのではないか。