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国別納税額、主要企業の3割が自主開示 新たに三菱UFJなど9社 投資家、透明性に厳しい目

国別や地域別の納税額を自主的に開示する例が、日本の主要企業の3割を超えたことがわかった。2022年は三菱UFJフィナンシャル・グループなど少なくとも9社が新たに示した。法的な開示義務はないが、企業の適切な納税についての消費者や投資家の関心が高まった影響が出ている。欧州などでは法制化の動きもみられ、情報開示はさらに進みそうだ。

TOPIX100構成企業を対象に、日本経済新聞が10月から11月にかけて調べた。国別や地域別の納税額を自主開示していたのは32社だった。

今年から開示を始めたのは三菱UFJのほか、積水ハウス信越化学工業日本郵政デンソー三井住友トラスト・ホールディングスオリックス第一生命ホールディングスソフトバンクグループが確認できた。

味の素は従来、地域別で開示していたが、22年からさらに詳細な14カ国とその他の国別納税額の開示に切り替えた。21年3月期は全世界での法人税の納税総額が約239億円。国別ではタイ(約74億円)が日本(約60億円)を上回った。同社はタイ事業で日本国内を上回る利益を得ている。

同社は「地産地消型のビジネスをするなか各国での適切な納税を自信を持って示した。(自社の)社会価値を上げるのが大事だ」とする。

ソフトバンクグループも10月、連結ベースの法人税支払額について日本国内分と海外分を自主開示した。22年3月期は国内が5512億円、海外が381億円だった。

上場企業に開示義務がある決算書には通常、どの国や地域で、いくら納税したかなどの詳細データは含まれない。ただ消費者や投資家が企業の適切な納税姿勢に関心を高める世界的な傾向が強まり、開示義務以上のデータを示す企業が増えた。

機関投資家などが署名する国連の責任投資原則(PRI)は17年、法人税の開示に関する投資家の推奨事項を公表。19年には非財務情報開示の枠組み「グローバル・リポーティング・イニシアチブ(GRI)」に税務の基準が追加され、税に関する情報開示が促されるようになった。GRIは日本や世界で多くの企業が採用している。

こうした動きの背景には「一部のグローバル企業は極端な節税策などで税逃れをしているのではないか」という不信がある。英国では12年、米スターバックスの法人税負担が軽いことが問題視されて不買運動に発展。欧州では、一部企業で積極的に税務情報を公開する動きも出ていた。英国の食品・日用品大手ユニリーバや教育出版大手ピアソン、スイスの食品大手ネスレなどが詳細な納税情報を公表している。

海外ではさらに、企業の納税情報の透明化に向けた法整備も進む。オーストラリアは13年に法改正し、年間総収入が1億豪ドル(約90億円)以上の上場企業などの法人税額などを税務当局が公開している。シドニー大学のマイケル・ダーキス教授(租税法)は影響について「企業の納税を巡る報道も増えた」と話す。

欧州連合(EU)も21年末、EU内で事業を営む大企業などを対象に、EU各国での納税額などの公開を義務付けるルール導入を決めた。23年6月までに加盟国が国内法を整備する見通しで、欧州に進出する日本企業も対応を迫られる。

一部の専門家は、消費者や投資家が企業に求める情報開示の水準がさらに上がる可能性もあるとみる。

PwC税理士法人の高野公人パートナーは「納税額だけではなく説明も重要な場合が出てくる」と指摘する。組織再編など節税目的以外でタックスヘイブンに子会社を置いたり、現地国の優遇税制で税負担が小さくなったりする場合があるためだ。

高野氏は「『税逃れではないか』などの不要な疑念を招かないよう、『なぜそうなっているか』を丁寧に説明することも大事になる」と話す。

(宮川克也、相模真記)