2006~07年に東南アジアを回る視察団に参加したときのこと。インドネシアやタイなどを経て、最終地でベトナム南部の商業都市、ホーチミンを訪れ、日本への帰国前に現地のお土産屋を巡っていた。立派な仏像など色々な商品が並ぶなか、ある店の一角に置いてあったのが木彫りの釈迦(しゃか)像だった。
顔立ちは悪くないし、価格は当時で3000円ほどとそれほど高くなかった。私は釈迦像に特別な思い入れはなく美術品志向で購入したのだが、見ていると落ち着く感じがするのが不思議だ。欧米など海外に出張してもお土産を特段買わない私にとって、たまたまの出会いだった。木彫りの釈迦像は今も本社内の会長室に置いている。
東南アジアの国々はほとんど行ったと思うが、その中でベトナムは今後も経済成長が期待できる国だ。平均年齢は30代前半と若く人口は今も増え続けている。まちなかのいろんな場面で一生懸命に働く姿を目にし、好感を抱いた。
ベトナムを最初に訪れたときは街が雑然とし、電気を盗む「盗電」も珍しくなかった。それでも、街の雰囲気として、何か清潔な感じを受けたのを覚えている。経済成長が一段と進む他のアジアの国でも、街が清潔でないと感じる場面はあった。ベトナムの伸び代は大きいと考えている。
当社はこれまで、ベトナムでオフィス開発や住宅建設を手掛けてきた。今後もアジアを含めた世界中の有望な都市を中心に、安定的な収益が期待できる開発を進めていく考えだ。日本は少子化で人口減少が加速し、高い事業成長は見込みにくい。それだけに、海外市場は数少ない成長市場と言える。
海外といっても国や地域で文化やものの考え方が異なるため、簡単に事業が進むとは思っていない。三菱地所グループとして日本で長年培ってきた知見やビジネスをうまく生かしていきたい。ただ利益を得るだけではなく、各地で不動産ビジネスを根付かせていく。それが、東南アジアなど各国の成長の後押しにもつながればと願っている。
来週はノンフィクション作家の与那原恵氏です。
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