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湯沢リゾマンに新たな付加価値 民泊やコワーキング整備

同町岩原(いわっぱら)地区のマンションでは民泊運用に加え、コワーキングや共用リビングスペースの整備を始めた。湯沢町はリゾートマンションの老朽化や利用者減少といった課題を抱える。付加価値を高めることで、資産価値の向上と町の活性化につなげる。

岩原スキー場まで徒歩5分。バブル期に建設されたリゾートマンションが立ち並ぶ岩原地区に「エンゼルリゾート湯沢」がある。築30年を超えるこの建物で、現在産学連携プロジェクトが進んでいる。かつてレストランとして使用され、現在は空きスペースになっている2階部分の改修プロジェクトだ。

手がけるのは同マンションを管理運営するエンゼル(東京・千代田)と、新潟工科大学(新潟県柏崎市)の工学部建築・都市環境学系に所属する学生たち。エンゼルや居住者の意見などを基に、主に学生たちがデザイン案を作成した。ゲレンデを眺めながら仕事ができるコワーキングスペースや共用リビングスペース、屋内バーベキュースペースを新たにつくり、エンゼルリゾート湯沢の利用者限定で使用できる場所にする。

「ダクトなど既存の設備をどう活用するか、照明器具はどうするか……。予算内で設計するのは非常に難しかった」と工学研究科の藤本大賀さんは振り返る。予算は1200万円で、マンションの管理組合とエンゼルがそれぞれ500万円を出資。残りの200万円は現在クラウドファンディングを通じて集めている。12月中の開業に向け、学生たちも現場に入り急ピッチで作業を進めている。

改修中の2階共用スペース。新潟工科大学の学生が作業している(24日、新潟県湯沢町)

エンゼルリゾート湯沢は全130戸のうち定住利用は計11戸のみ(エンゼルの寮を含む)。約70戸はオーナーはいるが日常利用はされていない。なぜそうした施設にコワーキングや共用リビングのスペースを新設するのか。実はエンゼルリゾート湯沢は、残り50戸を民泊として活用している全国的にも珍しいリゾマン民泊施設だからだ。

2018年の民泊新法施行を受け、同年から民泊運用を始めた。インバウンド(訪日外国人)や冬場のスキー客に加え夏場はフジロック、長岡花火などのイベント需要も取り込み人気の民泊施設となった。民泊運用が奏功し、1戸10万円(1K)まで落ち込んだ購入価格は20倍以上の200万円超まで上昇。インバウンドも戻りつつある。

コロナ禍で20、21年は思ったように集客できなかったが、リモートワークやワーケーション需要で客足は徐々に回復し始めている。新設するコワーキングスペースは民泊するビジネス客や旅行客の利用、リビングスペースは定住者と民泊利用者、リゾートマンションオーナー同士の交流の場を期待する。

1990年代前半のスキーブームを背景に建設が相次いだ湯沢のリゾートマンションは、今も50棟以上が残ったままだ。バブル崩壊後の需要急減や建物の老朽化が進み「ゴーストタウン」や「負動産」などと呼ばれることも多い。

リゾートマンションの付加価値を高めることは、湯沢町全体の価値向上にもつながる。「民泊やコワーキングの整備など、建物を有効活用する動きが他のリゾートマンションにも広がってほしい」。プロジェクトにも参画する工学研究科の生方翔也さんは力を込める。定住やスキーシーズンだけの利用にとどまらない、新しいリゾートマンションの使い方を提案していく考えだ。(斉藤美保)