海外のプライベートエクイティ(PE=未公開株)ファンドの日本参入が相次いでいる。欧州大手のパートナーズ・グループは日本で新たに投資チームを設ける計画を明らかにした。日本は経済全体に対するPE市場の規模が小さく、成長余地が大きいとみる。急速に進むインフレで企業業績が悪化するとの懸念もあり、PEビジネスが定着するか不透明感もある。
パートナーズ共同創業者で取締役のウルス・ビートリスバッハ氏はインタビューで「日本のPE市場の潜在力は大きい」と述べ、本格参入を明らかにした。2022年夏には米大手ファンドのKKRなどでPE投資を担当した越智多津哉氏を日本のPE部門責任者として採用した。
海外では主に企業価値で数百億~1000億円程度の中堅企業に投資しており、日本でも同様の規模を想定する。投資先企業では同業他社などを追加買収して事業規模を広げるほか、デジタルトランスフォーメーション(DX)や脱炭素を進めて企業価値を高める。
パートナーズはスイスを本拠とするPEやインフラ、不動産などのファンド運用会社で、スイス証券取引所に上場している。22年6月末時点の運用資産総額は1306億ドル(約18兆円)。21年には米IT(情報技術)のグローバルロジックを日立製作所に約1兆円で売却した。
海外ファンドの日本参入はここ数年で活発化している。21年にはアジア大手のPAGが本格参入し、22年にはテーマパークのハウステンボス(長崎県佐世保市)を1000億円で買収した。欧州系EQTは21年に日本で拠点を設置。22年にアジア系で日本での実績もあるベアリング・プライベート・エクイティ・アジアと統合したのをきっかけに投資拡大を狙う。
参入が相次ぐのは、PE投資の機会が増えるとみているためだ。大手企業が非中核事業をファンドに売却する案件が相次いでおり、オリンパスは祖業の科学事業を米ベインキャピタルに4000億円超で売却する。
もっとも、欧米ではインフレや金利上昇の影響で、ファンド投資先の業績が悪化したり、借入金の調達が難しくなったりしている。市場の不透明感が高まると企業買収時の価格が下がるため「むしろ魅力的な投資機会が増える」(パートナーズのビートリスバッハ氏)との声もあるが、ファンド各社が思惑通り投資を広げられるかは不透明だ。
(和田大蔵)
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