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18日連続ストップ安 ベトナム不動産発、信用収縮の芽

不動産会社の株価急落が雪崩を起こす形でベトナム全体の株式相場が大幅に下落。発端は社債市場のバブル抑制に向けた政府の介入だ。米金融政策の加速や景気後退懸念が広がるなかでの荒療治はどうなるか。世界の市場に影響しないか。

業界第2位に売り殺到

18日間連続で制限値幅の下限(ストップ安水準)まで下落――。ベトナムで渦中の企業となっているのが不動産業界第2位のノバランド・インベストメント・グループだ。3日から28日まで、毎日ストップ安水準まで売られることになった。

ホーチミン市場では1日当たりの制限値幅はプラスマイナス7%と他市場に比べて小幅に抑えられている。それでも累積した下落幅は大きく、株価は10月末と比べて3割程度にまで低下した。

ノバランドを筆頭に、業界首位で複合企業ビングループ傘下のビンホームズなども下落。不動産向け融資の焦げ付きへの懸念を背景とした銀行株の売りが重荷となり、ベトナムの主要株価指数であるVN指数は、11月中旬には8月末比で3割近く下落した。

「ベトナムの不動産セクターに対して慎重に見ている」(野村国際)。なぜベトナム株、とりわけ不動産株がここまでの事態に陥り、市場関係者の警戒を高めているのか。

巨大化した社債市場

政府が社債市場の規制に乗り出したことが背景にある。ベトナムでは社債市場が急拡大していた。アジア開発銀行(ADB)のデータによると、現地通貨建ての社債の発行残高は9月末時点で718兆ドン。1年前の21年9月時点では491兆ドン、17年9月末時点だと60兆ドンとなり、この5年間で10倍以上に拡大した。

特に問題視されているのが不動産セクターの社債発行だ。セクター別で見ると、21年時点では不動産が4割を占める。

そこに、汚職などの不祥事で、不動産会社の幹部が相次ぎ逮捕された。「効率的に経済開発を進めるために資本市場の整備に尽力してきたが、『タン・ホアン・ミン事件』などが市場に影響をもたらしている」。ベトナム現地紙はホー・ドク・フォック財務相の発言を紹介している。この事件では不動産大手タン・ホアン・ミングループの会長兼社長が、グループで発行した私募債の目的外使用などが問われた。

こうした情勢を背景に、政府は社債の新規発行の規制に乗り出した。

さらに業界にとって「泣き面に蜂」となったのが、米連邦準備理事会(FRB)の上を行く強烈な金融引き締めだ。通貨ドン安阻止に向けて中央銀行のベトナム国家銀行が9月と10月に1.00%ずつ、合計2.00%分の急速な利上げに踏み切った。政府はローンの抑制策にも踏み切っており、これと歩調を合わせた格好になった。

ローン抑制と金利高による販売難で頭打ちを食らったうえ、社債の発行難で用地仕入れのための資金調達ができなくなる、というダブルパンチで不動産会社が相次ぎ青息吐息となった――これがこれまでの構図だ。ノバランドは大幅な人員削減も強いられたと伝わっている。

不良債権問題に発展か

今後はどうなるか。JPモルガンは金融面でのストレスが強まっていると指摘。「預貸比率の上昇は信用創造を抑制し、経済成長の足かせになる可能性がある」とみる。

格付け会社フィッチ・レーティングスは流動性が減るリスクは抑えられているとしながらも、「投資家や銀行が警戒して距離を置くようになると、(不動産会社による)借り換えができなくなる問題が現実化し、銀行セクターに不良債権問題を引き起こすことになる」と警鐘を鳴らす。

もっとも、社債市場は政府による劇薬投入に強く反応している。ベトナム債券市場協会(VBMA)によると、22年7~9月期の社債の新規発行は61兆ドンと前年同期より68%減った。特に不動産会社の発行が急速に減少した。不動産業界では5兆ドンと前年同期の実に93%減となったうえ、新規発行した企業数も41社だったのがわずか4社となった。

ノバランド株は28日、ストップ安まで売られたあとは買われ、前週末比変わらずで引けた。3日から続いていた続落記録がようやく止まり、VN指数もいったん底を打っている。危機の芽は摘まれて「人間万事塞翁が馬」となるか、それとも荒療治も報われず本格的な信用収縮を招き、世界に混乱をもたらすのか。経過観察は怠れない。