中古住宅価格の指数、5年ぶり低水準
不動産仲介大手の中原地産が25日発表した、域内の中古住宅価格の動向を示す「中原城市領先指数(CCL、14~20日分)」は前週から1・57%安の159・76と、約5年ぶりの低水準になった。業界の先行き懸念から、28日午前の香港市場では恒基兆業地産や新鴻基地産発展などの香港不動産株がそろって下げた。
住宅ローン金利の高騰が市況悪化を招いている。香港は金融政策を米国に連動させており、米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げに追随し、香港金融管理局(HKMA、中央銀行に相当)も11月までに政策金利を4・25%に引き上げた。HSBCなど主要銀行のプライムレート(最優遇貸出金利)も上がっている。プライムレートは住宅ローンの指標金利の1つだ。
中銀の積極的な金融引き締めが住宅市場の重荷となっているのは米国や英国も同じだが、香港の場合はさらに厄介な問題が2つある。
投機の香港ドル売り、当局の買い介入も引き金に
1つは、外国為替市場での香港ドル安圧力の強まりが、域内の住宅ローン金利にも跳ね返っている点だ。香港は通貨も米国と一定の範囲で連動させるペッグ制を採用。1米ドル=7・75~7・85香港ドルの範囲内で、上限か下限に近づくとHKMAが介入に踏み切る仕組みとなっている。
米著名投資家の間ではカイル・バス氏に続き、ビル・アックマン氏もペッグ制の崩壊を見込んでいることが明らかになった。いずれも香港ドルが下落すると利益を上げられるポジションを組んでいるという。投機的な香港ドル売りの勢いが増しており、香港ドルは5~11月上旬、レンジ下限の7・85香港ドル近辺での推移が目立った。
HKMAは繰り返し香港ドル買い・米ドル売りの介入を余儀なくされたが、それによって短期金融市場で香港ドルの流動性が減り、香港銀行間取引金利(HIBOR)が上昇。1カ月物は28日に4・12%を超え、およそ14年ぶりの高さになった。1カ月物に連動するタイプの住宅ローン金利も押し上げている。
もう1つは香港域外への移住など、人口減による需要の鈍さだ。20年の香港国家安全維持法(国安法)の施行や、中国本土に準じた厳しい新型コロナウイルス抑制策などが重荷となっているようだ。
香港の李家超(ジョン・リー)行政長官は10月、この2年で労働力人口が14万人減ったと明らかにした。中国本土のリオープン(経済再開)による本土からの投資増も待たれるところだが、早期回復は望みにくい。本土では新型コロナ感染が再拡大。北京市など主要都市では抗議行動など混乱が広がっているが、中国当局はゼロコロナ策を堅持する構えを崩していないからだ。
賃料や売却価格を大幅引き下げ、仲介業者は人員削減の嵐
香港メディアなどは11月28日、香港島北東部で日本人駐在員の居住も多い地区として知られる太古城(タイクーシン)のある住宅が、4月に提示した価格から3割安でようやく売れたと報じた。高級住宅地として知られる同島南部・浅水湾(レパルスベイ)でも1年前から2割近く賃料を引き下げた物件があるという。
中原地産や、美聯物業(ミッドランド)など仲介大手4社では、23年初めまでに3100人以上が失業見通しとも報じられた。クレディ・スイスは「香港の不動産業界の下押し圧力は、今後も半年は続く」とみる。
業界の回復の糸口は。まずは、金融政策で連動する米国の政策金利がピークに達すると見込まれる23年半ばごろまでをしのげるかだ。その間に香港の魅力を再度高め、需要回復につなげられるかにかかっている。
香港政府は10月、高い年収や高学歴の人材に対するビザ発給の方針を打ち出した。永住者以外の人が住宅を購入した場合にかかる印紙税の一部を、一定期間後に還付する仕組みも決めるなど、域外からの投資回復に向けた手を打っている。
ただ、不動産業界の関係者は15年から停止している、香港での投資額が大きい人にビザを発給する「投資移民制度」の再開や、印紙税の撤廃など、さらに踏み込んだ手を打つ必要があると指摘している。
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