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「米REITは長期のインフレヘッジで有望」現地プロに聞く 人生100年時代の資産形成術(5)

分配金の受け取りと値上がりの両方が狙えるREITは、老後資金づくりの有力な選択肢だ。米国のREITなら、さらに円安・ドル高による円建て価格の上昇も見込め、インフレの影響を軽減するヘッジにもなり得る。

では、米REITに投資するプロは足元の動向をどう見ているのか。日本国内で販売されている米REITを対象にした投資信託の中で、純資産総額において最大規模を誇る「フィデリティ・USリート・ファンド」。この投信の運用担当者で、24年にわたってREITへの投資を手掛けてきた米フィデリティ・インベスメンツのスティーブ・ビューラー氏に話を聞いた。

――足元の米REITの動向をどのように見ていますか。

米国のREITの先行きを見通す上で、重要な要素が3つある。ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)、資本コスト、バリュエーション(投資尺度)の3つだ。

スティーブ・ビューラー氏

1つ目のファンダメンタルズは、我々が見る限り、すべてのタイプの不動産で良好、もしくは安定的だ。例えば賃料の伸びをみると、オフィスと商業施設以外は堅調に推移している。賃料収入から管理費を差し引いた純利益で、物件全体の収益性を示すNOI(営業純利益)の伸び率も堅調だ。

2つ目の要素である資本コストは上昇している。金利の大幅な上昇によって、不動産会社が資金を調達しにくくなっているからだ。今後金利が安定したり、下落したりすれば、不動産会社の資本コストが低下して米REITの価格上昇にはポジティブだ。ただし、金利と米REITの値動きの関係は、過去を振り返ると、短期と長期の金利ともにほぼ無相関だった。今後は過去と同じく相関関係が薄れていく可能性がある。

3つ目はバリュエーションだ。REITの時価総額が純資産総額(ネット・アセット・バリュー=NAV)の何倍かを示すNAV倍率は低下している。現在の時価総額が低く、保有資産の価値と比べて割安に取引されているからだ。また、REITの時価総額がREITの本業からの収益を示す指標であるFFO(ファンズ・フロム・オペレーション)の何倍かを示すFFO倍率も昨年に比べて低下しており、米国のREITが割安になっていることを裏付けている。

個人的に注目しているのは、ドライパウダー(投資に回っていない待機資金)の存在だ。プライベートエクイティ(未公開株)ファンドや不動産ファンドから資金が流出し、1000億ドル(約14兆円)以上の待機資金が積み上がっている。足元では資本コストの上昇を背景に不動産の取引が落ち込んでおり、投資家が様子見の姿勢を取っている。潜在的な需要になりそうだ。

円安が米REITの追い風に

――REITはインフレに対するヘッジ(回避)になり得るのでしょうか。

長期的にはインフレヘッジになるとみている。理由は2つある。一つは、土地の値段が上昇していること。もう一つは、世界的なインフレで金利が上昇し、建物の間接的な建設コスト(インプットコスト)が高まってきていることだ。

また米国の不動産賃貸契約には、消費者物価指数(CPI)条項(賃料がCPIに連動する仕組み)がある。そのため、不動産の賃料がインフレ率に連動する傾向がある。だからREITの分配金利回りなども、ある程度、インフレ率に連動することが想定される。ごく短期間で見た場合はヘッジとならない可能性はあるが、長期的に見ると米REITは十分なインフレヘッジの機能を提供していきそうだ。

日銀がゼロ金利政策を続ける日本では、分配金利回りを重視する投資家が多いように思う。日本の投資家は為替相場の動向にも敏感で、足元の円安基調は、米REITの購入を検討する日本の投資家にとって追い風になるだろう。円安により、海外資産の円建て評価額が膨らんでいるからだ。

――運用する「フィデリティ・USリート・ファンド」では、住宅型のREITが組み入れの上位に来ています。住宅型の見通しはどのように見ていますか。

住宅型の中でも、特にアパート、一戸建て、プレハブ住宅に注目している。理由は米国の雇用市場が良好で、これらの中でも賃貸向けの住宅の需要が増えているからだ。REITは賃貸からの収入が基本。米国の西部や南部の「サンベルト地域」での賃貸住宅に対する需要が旺盛で、持ち家と比較して賃貸価格は比較的手ごろ。新規供給は比較的緩やかだ。

また米国の人口が年々増加しており、既存の賃貸住宅で非常に空室率が低い状態が続いている。住宅の供給不足が解消されないことは住宅型のREITにとっては追い風だ。また、米国の金利上昇に伴って、住宅ローンの金利も上がり続けている。住宅ローン金利が上昇すれば、住宅の購入が手控えられ、賃貸住宅に需要が流れていくとみている。