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FTX「巨額の資産消失」 現預金保有は1750億円、初審問

FTX側は破綻以降に「巨額の資金が消失あるいは盗難にあった」と述べ、サイバー攻撃による仮想通貨の流出が続いていると指摘した。約12億4000万ドル(約1750億円)の現預金を保有していることも明らかにした。

弁護士団が「米国の企業経営史上、最も突然で困難な破綻のひとつ」と述べた破綻処理手続きがようやく始動した。米連邦破産法11条(チャプター11)の適用申請から初回の審問まで10日あまりも要するのは極めて異例だという。審問には新たに最高経営責任者(CEO)に就任したジョン・レイ氏らFTX関係者のほか、債権者の代理人などが参加した。

FTXはチャプター11の適用申請直後、不正アクセスによる仮想通貨の流出が起きているとツイッターなどで報告していた。仮想通貨の分析会社エリプティックコネクトによると、20日までに4億7700万ドル相当の不正な移動があったという。FTXの弁護士団は22日、FTXが米司法省やニューヨーク州南部地区連邦地検のサイバー犯罪チームと連絡を取り合っていると述べた。

弁護士団は、FTX創業者で前CEOのサム・バンクマン・フリード氏のずさんな経営について批判した。FTXが本社を構えるバハマでは、約3億ドルもの企業資金が事業と関連の薄い不動産購入に充てられた。多くは自宅や別荘として使われたという。

バンクマン・フリード氏は企業統治を無視し、周囲の一握りの関係者にグループ経営の権力を集中させていた。経営破綻に伴い同氏がCEOから退いたことは「裸の王様であったと知らしめた」とFTX弁護士団のジェームス・ブロムリー氏は指摘した。

FTXは、裁判所に提出した文書で20日時点の現預金保有状況についても明らかにした。グループ全体で約12億4000万ドルの資金があり、このうち約2億6000万ドルが顧客からの預かり金という。日本法人FTXジャパン単体では約1億7000万ドルの現預金があり、うち5000万ドル強が預かり金だ。

22日の審問では手続き面での進展があった。ジョン・ドーシー判事は暫定措置として、FTXが大口債権者上位50人の名前や所在を伏せてリストを提出することを認めた。FTX側はプライバシーの問題に加えて、主要顧客の情報が競合他社に伝わると今後の債権回収に支障を来すとして、個人情報の非公開を求めていた。

裁判の管轄権を巡る問題も解消されそうだ。バハマ証券監督当局が指名したFTX子会社の清算人は、バハマ拠点の会社の破産・再建はバハマの法律に基づくべきだと主張してきたが、米デラウェア州の破産裁判所で一括手続きを求めるFTX側に歩み寄った。今後は当該子会社についても同州で手続きが進むことになる。

次回の審問は12月16日に開く。大口債権者の詳細非開示を続けるかが主なテーマとなる。FTXは正確な財務情報を2023年1月までに提出すると説明しており、広範な事柄に関する審問は同月に開かれる見通しだ。