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日銀「デジタル円」、3メガ銀と実証実験へ 23年春から

災害時などを想定し、インターネットの届かない環境でも稼働するか確かめる。2年間ほど実験を進め、26年にも発行の可否を判断する考えだ。

中銀のデジタル通貨はCBDC(Central Bank Digital Currency)と呼ばれる。デジタル化が進む中、世界の主要中央銀行は紙幣や硬貨に代わるCBDCの発行を模索している。

民間の電子マネーが普及し始めているが、CBDCはお金を即時にやりとりできるのが利点だ。クレジットカードなどは利用者の支払いからお店への入金まで通常、1カ月程度かかる。CBDCは支払いと同時に入金され、売掛金も発生しないため決済コストの低下が期待できる。夜間や休日でも銀行間で送金できるようになり、支払いの利便性が高まる。

使える場所の多さも特徴だ。企業などが提供する電子決済は、使えるお店や公共交通機関が限られる。CBDCは現金と同じ利便性を追求するため原則、日本のどこでも使える必要がある。日銀が実際に導入すれば、遅れていたキャッシュレス決済の起爆剤となり得る。

先行する中国は一部地域でデジタル人民元を試験発行し、実際に買い物などに使える。米連邦準備理事会(FRB)では11月からニューヨーク連銀がシティグループなど民間銀行と実証実験を行っている。欧州中央銀行(ECB)も米アマゾン・ドット・コムなどの企業とパイロット実験を進め、23年にも導入の是非を判断する。国際決済銀行(BIS)の調査では世界の中央銀行の約9割がCBDCの研究に着手している。

日本も米欧と足並みをそろえており、日銀が21年から発行や流通など通貨に必要な基本機能の検証などを内部で独自に進めてきた。23年から実施するのは実用化を見据えた最終段階にあたる「パイロット実験」で、3メガ銀や地銀などといった企業に参加意向の確認を始めている。企業は前向きな姿勢を示しているという。

パイロット実験では参加した銀行と連携し、銀行口座でCBDCのやりとりができるか検証する。停電時などに使えるようインターネットがない環境で機能するかも試す。フィンテック企業やIT(情報技術)ベンダーの参加も募り、本人確認などセキュリティー機能の開発も進める。実験にあたり、民間企業から日銀への出向者も受け入れる。

日銀は現時点ではCBDCの導入を決めておらず、実験の結果を踏まえて判断するとの立場だ。導入には国民的な合意が必要で、法改正やシステム整備にも時間がかかる。日銀の黒田東彦総裁は1月、CBDC発行の可否について個人的見解として「26年までに判断する」と話した。発行が決まったとしても当面は紙幣の発行を続け、CBDCと併用できるようにする。

世界ではビットコインなど、政府の監督が及ばない暗号資産(仮想通貨)が広がりつつある。ブロックチェーンなど技術を用いる仮想通貨は、国境をまたぐ決済にかかる時間やコストを大幅に圧縮できる利点がある。一方で、マネーロンダリングや、FTXトレーディングの破綻にみられるような不正のリスクも大きく、中銀によるデジタル通貨の発行を求める声が上がっている。

CBDCの導入にあたっては、ハッキングなどのリスクをゼロに抑える必要がある。プライバシーの観点から、中央銀行がどの程度の情報を管理するかという課題もあり、FRBやECBなどでも導入の最終判断は下っていない。

政府は骨太の方針に「22 年度中までに行う概念実証の結果を踏まえ、パイロット実験や発行の実現可能性・法制面の検討を進める」と記している。日銀は関連費用の予算計上に向け、財務省など関係機関との調整を進める。