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上期最高益の三井不動産、米国事業好調もくすぶる不安

三井不動産の業績が好調だ。9日発表した2022年4~9月期連結決算は、純利益が前年同期比16%増の1001億円と同期間で過去最高を記録。好調な業績を支えているのが海外事業の成長だ。米ニューヨーク中心部で超高層ビルが新たに竣工。米メタ(旧フェイスブック)や米ブラックロックなどが入居する予定だ。ただ、オフィス需要の見通しや米国における景気動向、金利の上昇など、いくつかの不安要素があることも否めない。

22年4~9月期の売上高は1兆570億円で前年同期から6%増えた。国内では、「リパーク(貸し駐車場)」や「リハウス(個人向け仲介)」の取引単価が向上。リパークでは、稼働率の向上や費用削減、リハウスの好調などが増収増益につながった。商業施設「ららぽーと福岡」の新規開業も寄与した。

同時に注目したいのが海外事業だ。実に営業利益全体の約3割を占める381億円を稼いだ。けん引するのが、10月に完成したばかりの地下3階から地上58階建てのオフィスビル「50ハドソンヤード」と、その前に参画した「55ハドソンヤード」など既存の米国施設だ。

50ハドソンヤード(左)と55ハドソンヤード

50ハドソンヤードは、米国子会社を通じて参画していた米国ニューヨーク州マンハッタン地区の大規模複合施設「ハドソンヤード」のビル群の一つだ。総事業費は6000億円超で、同社が事業シェア9割を占める。三井不の米国事業の収益向上を支える、オフィスビル事業の代表物件だ。

現時点ではビルの8割の契約が完了している。入居企業にはメタや、資産運用のブラックロックなどが名を連ねる。今回の50ハドソンヤードの前に、別のビルである55ハドソンヤードでも事業シェア9割で参画している。

これらの海外事業は、三井不グループが掲げるグループ長期経営方針「VISION 2025」における3本柱の1つだ。

25年前後で目標とする連結営業利益3500億円のうち30%を海外事業で稼ぎ、米国事業の営業利益額は22年3月期比で3倍超の700億円に引き上げたい考え。22年3月末時点では、総資産のうち23%を海外事業が占め、うち7割以上が米国となっている。

米国では主にオフィスと賃貸住宅の販売と賃貸を手掛ける。円安の影響で、日本国内の一棟物のオフィスに関心を示し、投資する海外投資家の動きも活発化している。

IT大手が人員削減

この目標達成に向け、順調な歩みを進めている三井不。だが、目先はリスク要因が散見される。

その一つが、オフィスのニーズ減少だ。新型コロナウイルス禍でリモートワークの割合が増加。ニューヨーク中心部でも、オフィスニーズが減少している。その中心的な存在が、巨大IT企業だ。

急成長に伴う人員拡大で、IT企業は西海岸だけでなく東海岸に拠点を設け、エンジニアなど優秀な人材を確保すべくオフィススペースの拡大を続けてきた。メタが50ハドソンヤードで借りるオフィススペースは、中層階の20フロア以上で10万平米超という。三井不は「メタとは10年以上にもおよぶ非常に長期の契約を締結済みであり安定的」とする。だが、メタは従業員の13%に相当する1万1000人以上の人員削減を発表している。アマゾンも採用凍結を表明するなどスリム化を進めており、人員削減が進めばオフィススペースの削減につながる可能性がある。

併せて気がかりなのは金利上昇のリスク。米国に限定すると、米連邦準備委員会(FRB)の利上げ方針により、足元のようにオフィスを含む不動産の堅調な需要が続くと単純に楽観視できる状況にはない。

想定されるリスクを踏まえたうえで、これまでの手堅い海外事業の展開を継続できるかが注目ポイントになりそうだ。

(日経ビジネス 馬塲貴子)