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ファスト映画投稿、5億円賠償命令 無断で短縮版、再生1回200円算定 東京地裁、利益大幅に上回る額

映画を無断で10分ほどに編集して公開する「ファスト映画」の投稿者2人に、東京地裁は17日、5億円の賠償を命じた。賠償額は動画公開で得たとされる利益を大幅に上回り、安易な著作権侵害に警鐘を鳴らしたといえる。海賊版被害の根絶はなお遠い。広告収益源の遮断や侵害行為があった場合のブロックチェーン(分散型台帳)による証拠保全など、コンテンツ保護に向けた多面的な取り組みが欠かせない。

判決はファスト映画の損害賠償をめぐる初の司法判断。2人は2020年に日活や東宝など13社が著作権を持つ映画54作品を編集、動画投稿サイトで公開し約700万円の利益を得たとされる。

判決は映画会社側の主張に沿い、動画再生1回当たりの被害額を200円と算定。2人に請求全額にあたる5億円の賠償を命じた。2人は刑事でも、著作権法違反罪で有罪が確定している。

コンテンツ海外流通促進機構(CODA)によると、ファスト映画は20年春ごろに急増した。21年6月時点で計2100本が確認され、被害総額は推計で956億円に上る。主に若者の間で時間効率を示す「タイムパフォーマンス」を重視する志向が強まったことも、ファスト映画の投稿が増えた背景にあるとみられる。

現在は9割減の約210本で、担当者は「刑事、民事の両輪の取り組みが結果につながった」と話す。しかし日本の漫画や映画を無断で配信する海賊版サイトはなお多い。出版社などの一般社団法人ABJ(東京)によると、21年の漫画作品のただ読み被害は約1兆円と20年から5倍近くに増えた。

CODAによると、ファスト映画は投稿先がほとんど米グーグルが運営する「ユーチューブ」で、企業は削除要請しやすかった。海賊版サイトは運営者の特定につながる発信者情報が秘匿されていることも多く、削除は容易ではない。

新たな抑止策になりそうなのがサイト運営者の収益源を断つ取り組みだ。海賊版などの違法サイトは通常、本来は有料のコンテンツを無料で公開し、閲覧数に応じた広告収入を運営の柱としている。

10月にはCODAが集英社からの要請で、海賊版サイトに広告掲載していたスペインの広告配信事業者に配信中止を求めた。その後、実際に停止されたことが確認されたという。

広告大手の博報堂はブロックチェーン技術開発を手掛けるケンタウロスワークスなどとデジタルコンテンツの著作権を管理するサービスを開発した。著作物と類似するコンテンツがないかを探索し、著作権侵害のおそれがあるウェブサイトを発見するとブロックチェーン上に保存して証拠を残す仕組みだ。

原告側弁護団の中島博之弁護士は「摘発や高額な賠償請求によるペナルティー、広告の停止など海賊版サイトの運営に対し抑止力となる取り組みを今後も積み重ねていくことが重要だ」と強調する。