· 

慶大生8割が利用 大学生限定SNSアプリが人気の理由

大学生の間でひそかなブームを呼んでいるアプリがある。学生専用SNS(交流サイト)アプリの「Penmark(ペンマーク)」だ。時間割作成から履修管理、出席記録、授業のレビュー、学生同士のSNSまで、大学生活全般をカバーする。

新型コロナウイルス禍でつながりを断たれた大学生の需要をとらえ、提供開始から3年余りで慶応義塾大学生の8割、関連アプリを含めると全国の大学生の5人に1人にまで普及した。大学生限定SNSが人気の理由とは。

前沢友作氏も注目、時間割が起点のアプリ

「大学の授業の情報収集から時間割作成、履修状況や授業の評判の共有まで、プライベートを含めた大学生活全般をサポートする」。運営会社ペンマーク(東京・目黒)の横山直明最高経営責任者(CEO)は、同社サービスの意義をこう説明する。

自身も慶大生の横山CEOは、「入学後に入ったサークルに応じて、大学生活に必要な情報へのアクセスのしやすさが異なるという情報格差」(同)に疑問を感じ、2018年12月に学生起業して19年3月に慶大生限定の時間割アプリを開発し提供開始。1カ月で慶大生の4割が使うまでに普及した。

ペンマーク創業者と知らない友人の慶大生から「このアプリ使いやすいよ」とお薦めされたこともあるという横山CEO(撮影:日経クロステック)

手応えを感じた横山CEOは19年秋の資金調達を経て20年以降、対象の大学を拡大。現在までにPenmarkアプリのMAU(月間利用者数)は12万5000人に増えた。慶大生に限れば8割が利用しているという。

20年12月にはZOZOの創業者で資産家の前沢友作氏が率いる投資ファンド「前沢ファンド」が出資を決め、現在までに累計で10億円を調達した。

チャットアプリのLINEにSNSのFacebook(フェイスブック)と、類似の先行アプリが多数ある中で人気を集める理由は何か。

横山CEOは「時間割を起点に、学生生活の流れに沿って個々の機能を有機的に連携させた点」と説明する。授業の時間割データに必要な情報をひも付けたり授業単位でクラスメートと情報共有したりと、同アプリの機能は全て時間割が出発点になっている。

同アプリは各大学がウェブサイトで外部に公開しているシラバス(講義概要)の情報を自動的に取得し、大学ごとにデータベースをつくって管理する。利用者は自身の大学の時間割データをアプリ上で参照しながら、履修する授業を選んで自分だけの時間割をつくれる。

出席した授業については、出欠を記入して履修状況を自己管理可能なほか、授業でとった紙のノートや資料の画像データやPDFデータを登録できる。出席率を自動的に計算するため、出席日数が足りない授業が一目瞭然だ。

時間割の管理画面例(出所:ペンマーク)

時間割に基づくSNS機能も特徴の1つ。授業ごとに履修者専用のチャットルームが自動的につくられ、授業や教員の評判をクラスメート同士で共有できる。

カレンダー機能についても、時間割の情報とプライベートの予定をまとめて登録できる。時間割や出欠記録は利用者の個人的なもので、大学側に提出したり大学教員が出欠管理に使ったりする公的なものではない。

利用者の認証については、メールアドレスと学生証の2通りの方式を設けた。メールアドレスについては大学のドメイン名のみ受け付け、利用申請後にメールアドレス宛てに認証用メールを送る。学生証については、両面の写真画像データをペンマーク側に送ってもらい、担当者が目視で内容を確認している。

大学生協のビジネスモデルをデジタル変革

今後の課題は収益化だ。同社は学生向けには無料のままとし、「大学生協のビジネスモデルをデジタル変革してリプレースする」(横山CEO)ことで収益化を目指す。具体的には学生向けの物販や生活関連、金融といったサービスをネット経由で代行する。

物販に想定するのは教科書やパソコン、スーツ、家電など、生活関連はアルバイトや住宅、資格、旅行などで、それぞれの専門事業者と提携しアプリ内に販売仲介サイトを設ける。

ペンマークは事業者に送客して対価を得る。第1弾として23年4月にも、教科書やパソコンの販売を始める計画だ。

「大学生協は学生のあらゆる消費活動を満たせる役割を持つ一方、ずっとアナログとオフラインの世界でサービスを提供してきた。デジタル化することで、学生はいつでも必要なサービスを利用でき、当社はアプリの利用履歴データなどから学生に最適な商品やサービスをレコメンドできる」

横山CEOはこう意義を述べる。大学生協と敵対するのではなく、「オンラインの部分を当社が担うなど、積極的に手を組んでいきたい」(同)

「4年間だけではもったいない」の声に惑わされず

「大学生の4年間だけのサービスにするのはもったいないのでは」。周囲からはこんな声も聞こえるという。例えば大学OBや高校生へと、対象の利用者を「上下」に広げてはどうか、というわけだ。

横山CEOは「性急に対象を広げても内容の薄いサービスになってしまう」と、大学生活の4年間を充実したものにするという事業方針を貫く考え。近い将来の上場も視野に、当面の目標である100万MAUの達成を目指す。

(日経クロステック/日経コンピュータ 玉置亮太)